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【政治】

首相、当初から国書本命 中国古典出典の慣例破る

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 中国古典を典拠にしてきた元号が、初めて国書(日本古典)から選ばれた。安倍晋三首相は出典を国書とする案を当初から「本命」に据え、前例にとらわれずに日本の歴史や文化を重視する保守的な信条を反映させた。新元号決定の舞台裏を探った。

■祝福演出

 「若者たちが大きな花を咲かせ、希望に満ちあふれた日本を造り上げたい」。首相は一日の記者会見で、万葉集の一節から選んだ「令和」と、次世代を担う若者への期待を重ね合わせた。万葉集を「わが国の豊かな国民文化と長い伝統を象徴する国書だ」と強調し、国書採用を求めた保守派への配慮もにじませた。

 官邸会見室の背景には「祝福ムード演出」(政府関係者)のため赤色のカーテンを配置する周到な準備で臨んだ。

 政府は一日の臨時閣議に先立つ有識者懇談会で、国書だけでなく、中国古典も加えた計六案の候補名を五十音順で提示した。前回の「平成」改元時は、本命の平成を最初に説明した上で三案を示したのと比べて「丁寧な手続き」(官邸筋)を踏むためだった。

 有識者懇談会では、国書を推す意見が大勢で、中でも「令和」は「読みやすい」「親しみやすい」と高評価が相次いだ。作家の林真理子さんは「一番人気があった」と明かした。一方で衆参両院の正副議長への意見聴取に参加した一人は「命令の『令』だから、ありえない」と不快感を示した。

 全閣僚会議では首相自ら「古事記や万葉集など国書の中から出すべきだ。令和でいいのではないか」と議論を収め、閣議決定に至った。

■時流

 「国書がいいよね。『記紀万葉』から始まるんだよね」。首相は昨年末、古事記や万葉集を例示しながら日本古典を典拠とする意欲を側近議員に漏らした。

 年末年始に読んだという百田尚樹氏のベストセラー「日本国紀」にも万葉集は登場する。天皇や豪族に加え一般庶民が詠んだ歌を収めた「世界に誇るべき古典、文化遺産だ」と絶賛する内容だった。政権幹部は「日本の漢字文化は中国より下だと見る必要はない。首相は国書採用が時流だと考えていた」と証言する。

 とりわけ令和の「和」は、首相のこだわりが強い言葉だ。聖徳太子の十七条憲法の一節「以和為貴(和をもって貴しとなす)」にも登場し、二〇一三年四月の日本記者クラブの会見で墨書し、美術展に直筆の色紙を出展した経緯もある。首相は「和」の精神について「日本人は欧米発の民主主義を明治期にうまく受け入れた」と周辺に語っていた。

■俗用の壁

 首相の「日本古典が本命」との意向は、古谷一之官房副長官補を筆頭とする元号担当チームに「二〜三年前」(官邸筋)には伝わっていた。

 千三百年以上続く元号の歴史の中で、国書から選ばれた例は確認されていない。国書は漢文で書かれても「元をたどれば中国古典を引用した『孫引き』が多い」(国文学者)との評価が一般的だったからだ。政府は、現代に近い作品は評価が分かれるため「室町時代以前」との基準を設定。元号が中国古典からの孫引きでも「漢字二文字を国書の一節からうまく選べれば構わない」(関係者)として排除しない方針とした。

 元号の選定基準には「俗用されていない」との「壁」もあった。平成改元時は地方の焼き肉店や中華料理店まで調べ上げたとされる。今回は「令和」が人名に使われていることを事前に確認していたが「俗用されていることよりも良い意味を重視した」(古谷氏)とハードルを下げた。

 首相は一日夕の自民党役員会で国民への定着に自信を見せた。「若い人だって元号にものすごく関心がある。ツイッターやインスタグラムで取り上げている」

 

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