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【政治】

元徴用工判決を読み解く 韓国憲法裁の決定が後押し

同志社大・浅羽祐樹教授

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 韓国大法院(最高裁)による日本企業に対する元徴用工への賠償命令判決から三十日で半年。日本政府が求めた一九六五年の日韓請求権協定に基づく両国間の協議も行われず、冷却状態が続く。同協定で「解決された」はずの問題を蒸し返すような判決がなぜ出たのか。同志社大の浅羽祐樹教授(韓国政治)に、韓国憲法を軸に読み解いてもらった。 (大杉はるか)

 −大法院判決の経緯は。

 「韓国には憲法に基づき大法院とは別に、民主化の成果として国民が直接、違憲性を問える憲法裁判所がある。憲法裁は二〇一一年、韓国政府に対し、元慰安婦や韓国人被爆者の賠償請求を巡って日本と協議しないのは不作為だと違憲決定を出した」

 −憲法裁の判断が先に出ていた。

 「大法院は『憲法の守護者』の地位を憲法裁と争うように翌年、元徴用工の賠償請求権を破棄した原判決を差し戻した。この時点で昨年十月の判決がほぼ決まった」

 −日本政府は朝鮮半島の植民地支配を不法と認めていないのに対し、大法院判決は不法だと断じた。

 「韓国憲法前文は『(植民地下で起きた一九一九年の独立運動)三・一運動で建立された大韓民国臨時政府の法統(正統性)』をうたっている。一九一〇〜四五年の日本統治は強制で不法だとの理解につながり、判決の根拠になっている」

 −判決は日韓請求権協定を否定せず、元徴用工への慰謝料を認めた。

 「日本企業や政府が応じることは考えにくい。韓国政府が補償金を出すことも難しいだろう。韓国政府が補償金を出す場合、訴訟に関わった弁護士らは、違法な公金支出として国家賠償請求を示唆している」

 −日本には、韓国の司法は国民の意向に左右され過ぎているとの見方がある。

 「司法と政治の憲法上の構造が異なることも一因だろう。一方で、韓国大法院長は国会の同意を経て大統領が任命するが、日本の最高裁長官人事に国会の同意は必要ない。韓国より内閣の意向が投影されやすい設計ともいえる。韓国を指さすのではなく、翻って日本の『国のかたち』を考えてはどうか」

 −今後の日韓関係は。

 「政治関係に好転の兆しはない。とはいえ、日韓関係全般は重層的になり、政治外交と文化面は連動しなくなっている。日韓両国には少子化や女性の社会進出など共通課題も多く、韓国ほど参考になる国はない」

<あさば・ゆうき> 1976年大阪府生まれ。ソウル大学大学院修了。九州大韓国研究センター研究員、新潟県立大学教授などを経て4月から現職。「知りたくなる韓国」(共著、有斐閣)が6月刊行予定。

 

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