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【政治】

与党の慢心と野党の恐怖心 改憲議論を阻害 元衆院憲法調査会長・中山太郎氏に聞く

2005年2月、与野党議員が議論する衆院憲法調査会。中央は中山会長=国会で

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 中山太郎・元衆院憲法調査会長は本紙の書面インタビューで、憲法論議に与野党の信頼関係は不可欠であり、性急に進めるものではないと強調した。 (清水俊介)

 −かつての憲法論議を振り返り、どう感じるか。

 「二〇〇〇年に設置された憲法調査会は、共産党を含む護憲派の参加も得て濃密な調査を行い、報告書をまとめた。時折困難な状況に直面しつつ、各党の理解を得ながら、着実に歩みを進めてこられた」

 −調査会の運営では、どんなことを意識したか。

 「憲法はいかなる政党が政権に就いても守るべきルールを定めた国の基本法だから、憲法論議には与党も野党もない。幅広い政党の参加を得た上で、少数意見を十分に尊重して議論を尽くすことを常に心がけた。『政治的な思惑・党利党略から距離を置いて冷静に議論する』という共通認識を持つことが必要。このような運営方針が実行できたのは、与野党で協力して信頼関係を構築できたからだ」

 −今、衆参両院で改憲勢力が三分の二以上を占める一方、憲法審査会での議論は動いていない。

 「『改憲勢力』というくくりが憲法論議を阻害した最大の要因に思えてならない。与党には『いざとなったら押し切れる』という慢心が、野党は『もしかしたら押し切られる』という恐怖心が芽生え、結果として与野党を分断し、建設的な議論を阻害してしまった。与党はより一層丁寧な運営を心がけ、野党は憲法審を政局に絡めないようにして、一緒になって建設的な議論を行うことを望みたい」

 −安倍晋三首相(自民党総裁)は二〇年の新憲法施行を目指している。

 「目標を持つこと自体は否定しないし、総裁の発言が党内論議を加速させたのは事実。ただ、憲法改正は国会の仕事だから、これより先の議論は、国会での各党の取り組みに任せればよい。国会は期限を設けることなく熟議してほしい」

 −改憲に前向きな勢力だけで発議してもよいか。

 「幅広い合意のないまま提出や発議をしても、国民投票で承認を得ることは困難。憲法改正を真に実現したいのであれば、与野党の合意形成に粘り強く努力すべきだ」

 −自衛隊明記のように、国論を二分するテーマでも国民投票にかけてよいか。

 「初回の改正は必ず成功させなければならない。国民の理解が得られるテーマで発議する必要がある。それを担保するのが国会の熟議。熟議を経れば、理解を得られる案に昇華させることは可能ではないか」

<なかやま・たろう> 1968年参院選で自民党から立候補し初当選。参院3期、衆院7期を務め、沖縄開発庁長官や外相を歴任。衆院憲法調査会長、衆院憲法調査特別委員長を務め、国会の憲法論議を主導した。94歳。

<憲法調査会と憲法審査会> 憲法について総合的に調査するため2000年、衆参両院に「憲法調査会」が設置され、05年に報告書をまとめた。07年、両院に「憲法審査会」を設置。憲法調査会と異なり、改憲原案の提出や審査などの役割が与えられている。

 

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