東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

<「消された」報告書を読む>(下)「自助の充実」指摘 投資促進は政権の方針

 年金制度への不安を招いたと批判され、事実上の撤回に追い込まれた金融審議会「市場ワーキング・グループ(WG)」の報告書が提起したのは、「人生百年時代」とも呼ばれる長寿化の進展を踏まえて自らの資産を計画的に運用・管理する重要性だ。「貯蓄から投資へ」の流れを促したい安倍政権の方針とも合致する。

 本文の結びには、こんな記述がある。「寿命が延び活動し続けるということは、それだけお金がかかるということ」

 WGは「お金」を巡る現状や見通しについて、公的年金の給付水準が下がっていくとみられることや、企業の退職金が減っていることなどを指摘。一人一人が早い段階で資産運用を始める「自助の充実」の必要性を説き、政府には投資優遇税制の拡大を求めた。

 記述が投資に偏っているのは、麻生太郎金融担当相からの諮問事項が「家計の安定的な資産形成」だったことによる。報告書が「三十年で約二千万円の(資産)取り崩しが必要」とした公的年金に関する記述は、「老後の生活で足らざる部分」として提示したデータにすぎない。

 その報告書が年金制度の持続性を否定していると受け取られると、政府・与党内からは「政策議論の材料として取り上げるには値しない」(自民党の岸田文雄政調会長)などと批判が相次いだ。だが、盛り込まれた内容に安倍政権の方針との目立った齟齬(そご)はない。

 投資促進では、二〇一四年から少額投資非課税制度(NISA)を導入し、その後も未成年向けの「ジュニアNISA」、少額・長期の「つみたてNISA」を創設したことを紹介。「今後より一層の制度周知」の必要性を訴えている。

 背景には「極端に現預金に偏っている」(麻生氏)個人金融資産をはき出させ、経済活性化を図りたい狙いがある。実際、安倍政権の一六年の経済対策では「家計の『貯蓄から資産形成へ』という流れを政策的に後押し」と明記している。

 公的年金に関しても、報告書は「老後の収入の柱」だと説明しており、菅義偉(すがよしひで)官房長官が「老後の生活設計の基本であるという、これまでの政策スタンスと異なる」と述べるほどの食い違いはない。

 与野党とも「赤字」と表現された毎月の収支差を問題視しているが、安倍晋三首相は一八年二月の衆院予算委員会で「基礎年金だけで全て必要なものを賄うことは難しい。蓄えを含め、万全な老後が可能となるよう努力していきたい」と答弁。政府として、年金で生活費を全額カバーすることを想定していないと認めている。 (生島章弘)

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報