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【政治】

重い障害ある人も仕事を 当事者ら、国の制度変更求める

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 重い障害のある人が自宅で働けるよう後押しする動きが自治体や民間に出てきた。さいたま市は独自の支援を開始。重度障害者が遠隔操作の「分身ロボット」で接客する構想も進む。ただ、国の現行制度では、重度障害者が仕事をする間は介護にかかる費用の支援を国や自治体から受けることができない。当事者らは制度の見直しを求めている。 (北條香子)

 重度障害者は、障害者総合支援法に基づく「重度訪問介護」で、排せつや食事の介助を受けられる。研修済みの介護職員はたんの吸引といった医療行為もできる。本人負担は最大一割。仕事中に受けたサービスに関しては、全額が自分か雇用主の負担となる。

 さいたま市は今年四月、在宅で働く間に重度訪問介護を受けても、費用全額を市が負担する制度を新設した。六月から二人が利用し、民間企業で働く。

 その一人、人工呼吸器を付けて生活する矢口教介さん(31)は自宅でパソコンを使い、チラシやパンフレットを作っている。「自分の可能性を知りたい、居場所や仲間が欲しいとの思いから仕事をしたかった」と訪問介護を受けながら働けることを喜んでいる。本紙の取材にメールで答えた。

 オリィ研究所(東京)は分身ロボットを活用し、寝たきり状態でも働ける社会の実現に取り組む。昨年、十日間限定で東京都港区にカフェを開いた。障害者が自宅や病院でカメラ映像を見ながら、あごや目線でパソコンを操作。ロボットに飲み物を運ばせ、客との会話も楽しんだ。

 秋に再び開く予定のカフェには、約百人の障害者が応募。東京五輪・パラリンピックに合わせカフェ常設も目指す。

 分身ロボットを使う就労にも、重度訪問介護を巡る課題が立ちはだかる。昨年のカフェで働いた島根県の脊髄性筋萎縮症の女性は、都内の企業に分身ロボットでの受け付け業務を打診されたが、重度訪問介護に公的支援が受けられないため、採用に至っていない。

 さいたま市は独自の支援導入に先立ち、昨年六月に厚生労働省に制度の見直しを働きかけたが、実現しなかった。厚労省障害福祉課は「個人の経済活動に関する支援への公費負担は慎重に対応しなければならない」と説明する。

 国の別の制度「障害者介助等助成金」もあるが、たん吸引や人工呼吸器ケアといった医療行為は受けられず、重度障害者には使い勝手が悪い。矢口さんは「重度の障害があっても働くことが普通の社会になるよう重度訪問介護の制度改正を切に願う」と訴える。

 

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