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【政治】

<国会バリアフリー>立候補 自分の意志◆自民改憲案に反対 れいわ・舩後議員一問一答

インタビューに応じる舩後靖彦参院議員(中)と介助者の佐塚みさ子さん=26日、東京・永田町の参院議員会館で

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 参院選で初当選した、筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の舩後(ふなご)靖彦氏=れいわ新選組=に書面と対面でインタビューした。 (横山大輔、北條香子、大野暢子)

 ■事前質問に対する書面での主な回答は以下の通り。太字は対面での追加質問と回答。

 −参院議員としての目標は。

 「いかなる障害があっても、重篤な病気であっても、尊厳と楽しみをもって人生を全うできる社会、自分らしく生きられる社会の実現のため、ALSを生きる者としての経験を政治の世界で生かしたい。障害者の代表として、さまざまな特性をもつ当事者の声を聞き、それを国会の場で発信し、真に当事者の立場に立った『合理的配慮』が実現できる障害者政策に変えたい」

 −取り組みたい政策は。

 「すべての障害者が利用しやすい介助制度の構築と、必要な医療を受けられる体制の整備だ。特に重度訪問介護を、就学や就労にとどまらず旅行などにも利用できるようにしたい。言語、知的、聴覚、視覚障害者らの読む・書く・聞く・話すという情報アクセスを保障するため、人的保障や技術革新への支援も充実したい。バリアフリー化は、地方や小規模店舗、学校での徹底、公共交通機関の乗務員や会社の意識改革が課題だ」

 −舩後氏は現在、さまざまな方法でコミュニケーションを取ることができるが、それができなかったころのつらい体験は。

 「八年間、本を読むことができなかった」

 −参院文教科学委員会に所属している。教育政策での関心は。

 「障害のある無しで分け隔てせず、必要な合理的配慮を受けてともに学ぶ『インクルーシブ保育・教育』の実現に関心がある。ともに育ち、学ぶ場である教室から障害児・者に対する理解が自然に育ち、差別や偏見のない社会へとつながっていく」

 −インクルーシブ保育・教育の重要性とは。

 「(今の)授業は一方的なもの。(インクルーシブ教育は)考える力が養える」

 −ALS発症前は商社マンとして世界を回った。

 「(発症後)パソコンで英語のメールをやりとりしたことがある」

 −安楽死の法制化を巡る議論への考えは。

 「国会議員になり、ALS患者や家族から多くの手紙、電話、ファクスをもらった。その中に余命二、三年と告げられ、適切な医療、介護体制があれば呼吸器を使って普通の生活が送れることを知らないまま、絶望している人がいた」

 「人は経験したことのない未知の事態を受け入れられず、思考停止になることがある。そうした状況で安楽死や尊厳死という言葉に吸い寄せられる気持ちはよく分かる。しかし、必要なのは『尊厳ある死』の法制化ではなく、どんなに重い障害や病気があっても『尊厳ある生』を生きられるためのサポートだろう」

 −東京パラリンピック開幕まで一年を切った。

 「障害者が普段からスポーツを楽しめる環境の整備や、障害者政策への持続的な関心につながることが重要だ。心配ごとは、気温が非常に高い中で競技が行われること。なぜ真夏の開催にしなければならなかったのだろうか」

 −憲法についての考えは。

 「重要視しているのは法の下の平等を定めた一四条だ。症状が進み、施設に入所していた時にネグレクト(無視)にあい、十年にわたり虐待、差別を受けた経験がある。二五条の健康で文化的な最低限度の生活を営む権利が、障害者には十分に認められていないと感じる。一四、二五条に基づく施策を充実させたい」

 −自民党は九条を含む改憲を進める考えだ。

 「改憲より二五条などの憲法の理念を実現することが喫緊の課題だ。自民党改憲案には反対だ。特に、戦争などの有事や緊急事態時に政府に権力を集中させる緊急事態条項の創設は、断じて行うべきではない。戦争などの有事には、障害者は真っ先に切り捨てられるのではないかと恐れを抱いている。国会が政府を監視し続けることが極めて重要だ」

 −他の野党との共闘をどう考えているか。

 「次の衆院選で政権交代を目指すのが党の方針だ。野党候補者一本化や、政策の一致が必要だ。れいわは、参院選で消費税廃止を公約に掲げ、一定の評価を得た。野党共闘は消費税廃止、最低でも税率5%へ減税を統一政策にすべきだ。国民生活を底上げする経済政策を示し、与党との違いを明確にして衆院選に臨みたい」

 −安倍政権への評価は。

 「二〇一八年の国民生活基礎調査では全世帯の57・7%が、生活が苦しいと回答している。それでも政権が存続できるのは、野党がしっかりした経済政策を打ち出せなかったからだ」

 −秋の臨時国会が本格的な論戦デビューになる。

 「自分の虐待経験から、障害者が苦しむ社会はおかしいと感じるようになり、何とかしなければならないと思った。初心を忘れず、日本が抱えるいろいろな問題について、重度障害者が見たり、感じたことを大事にしながら政策提言をしていきたい」

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◆公費補助問題 訴えの第一歩

 ■対面で、介助者を通じたやりとりは次の通り。

 −舩後氏の立候補について、れいわの山本太郎代表に対し「障害者を政治利用している」などとの批判もある。

 「自分の意志であることに間違いない。代表に声をかけられて、日本の医療、介護を変えられる千載一遇のチャンスが来たと思った」

 −当選後、国会のバリアフリー化が進んだことで「国会議員だから特別な対応を受けている」との意見が出た。

 「自分たちを特別扱いしてもらいたいわけではない。重度訪問介護の(公費補助の)ことなども、まずは自分たちが訴えていき、第一歩から始めていかないと次に進むことができない」

 −今回のインタビューに対する書面の回答は、歯でかむセンサーでパソコンを操作して作成したと聞いた。どのくらい時間がかかったか。

 「三日間」

<ふなご・やすひこ> 岐阜市生まれ。9歳から千葉県在住。拓殖大卒業後、商社に勤務。1999年、41歳の時に手のしびれを感じ、翌年、ALSと診断された。症状の進行で身体の自由が奪われ、絶望していた時、メールなどを通じて患者同士で語り合う活動「ピアサポート」と出会い、生きがいになった。

 訪問介護を通じて出会った看護師の佐塚みさ子さんから「当事者の目線から経営に助言がほしい」と依頼され、2012年に佐塚さんが経営する福祉サービス会社の役員に就任。短歌の創作や人工音声での講演活動も積極的に行う。14年には、障害の有無に関係なく暮らしやすい社会の実現を掲げ、千葉県松戸市議選に立候補。落選。今年7月の参院選でれいわ新選組から比例代表の特定枠に重度障害者の木村英子氏(54)と共に立候補。2人とも初当選を果たした。

<ALS> 全身の筋肉が動かなくなっていく難病。10万人に1〜2人の割合で発症する。進行すると、自力で食物をのみ込むことや呼吸も困難になる。発症後も、視覚や聴覚、脳の機能は損なわれないことが多い。原因や根本的な治療法は分かっていない。2017年度末の国内患者数は約9600人。

 

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