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【政治】

恩赦、理念なき踏襲 批判警戒 直前に実施説明

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 国の慶弔時の慣例となっている恩赦が、平成から令和への代替わりでも実施されることが十八日、正式に決まった。政府は前例踏襲を前提としつつも、国民の支持を得られるかは見通せず、水面下で手探りを続けてきた。直前まで実施するかどうかを明らかにせず、議論を避けようとした姿勢からは、理念のなさが透けて見える。

◆伝統

 「まだ具体的な検討はしていない」。菅義偉官房長官は今年三月の国会答弁で、恩赦の扱いを巡り言及を避けていた。だが実際には首相官邸の指示の下で、秘密裏に調整を始めていた。

 政府内では、昭和から平成への代替わりに比べ「少なくとも縮小は必要」との意見が大勢だった。「国民感情に配慮し、全く実施しない」という選択肢も途中段階まではあった。だが「国民的な慶事に伴う伝統としての意義がある」(官邸筋)という声は根強かった。

 日本では、古くから皇室や国家の慶弔時に、天皇の恩恵的行為として犯罪者の刑罰の免除を行ってきた。現憲法でも内閣の助言と承認によって行う天皇の国事行為として、これまで計十回実施した。ただ、前回からは二十六年が経過。この間、二〇〇五年に犯罪被害者基本法が施行されるなど、被害者感情を重視する社会の流れが強まった。

 このため、官邸が最も気に掛けたのは、恩赦の実施で「時代遅れとの指摘が相次ぎ、天皇陛下の即位に水を差す事態」(政府関係者)になることだった。政権自体に批判の矛先が向かうのを恐れたのも間違いない。

 一方、刑事罰を行政権で変更する制度は「司法への介入」と法務省内でも慎重論が根強い。今回の代替わりでも「最後は官邸が決めることだが、本当にやるのだろうか」と疑問を抱えながら作業を進めていた。

 国民に対し、検討状況を直前まで明らかにしなかった政府。法務省幹部は「恩赦は刑事罰の内容を変更するという効力が大きな制度。早期に発表すれば混乱を生む可能性がある」と説明する。

◆不人気

 共同通信が今月実施した全国電話世論調査では、恩赦への賛成が24・8%だったのに対し、反対は60・2%だった。「不人気商品」(政府関係者)の露出を控え、国民の批判を最小限に抑えたいという思惑もあった。

 政府が自民党の政調審議会や総務会で恩赦実施方針と内容を説明したのは今月十五日だった。閣議決定は三日後で、二十二日の公布が迫っていた。

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◆本音

 一九八九年の昭和天皇大喪では、一千万人以上が対象となり、現憲法下で二番目の規模に。法務省幹部は「批判がかなりあった」と振り返る。

 その後、上皇さまの即位の礼に伴う九〇年恩赦は罰金刑のみの復権にとどめ、天皇陛下ご結婚の九三年は一律に実施する政令恩赦を見送り、特別基準恩赦のみとした。今年四月末の上皇さま退位で恩赦を実施しなかったのも「短期間で二回はやりすぎ」との意見が自然と一致したためだった。

 「国民が心を新たにする機会に、犯罪をした人の改善更生の意欲を高める」。これが政府の公式見解だが、ある政府関係者は「官邸も法務省も積極的にやりたいわけではなかった。でも、やめるわけにもいかなかった」と本音を打ち明けた。

 

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