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【政治】

新START延長議論を 核軍縮 賢人会議が最終報告

 核軍縮の道筋について各国の有識者が話し合う「賢人会議」(座長・白石隆熊本県立大理事長)は二十一日、二年間の議論をまとめた報告書を、若宮健嗣外務副大臣に提出した。来春の核拡散防止条約(NPT)再検討会議に向け、二〇二一年に期限を迎える米国とロシアの新戦略兵器削減条約(START)の延長や、それに代わる条約を議論する必要性を訴えた。日本政府に対しては、核保有国間の対話を支持するよう求めた。

 報告書は、国の安全を核兵器に依存する核保有国などと、核廃絶を求める非保有国との考えの違いを「困難な問題」と整理。NPTの改善策として、保有国が行った核軍縮の措置を自己申告し、各国で情報共有する必要性を明記した。

 外務省は今後、市民社会や専門家との対話の場を設け、核軍縮に向けた議論を継続する方針。今回の報告書はNPT再検討会議などの国際会議でも活用する。

 賢人会議は、一七年に国連で採択された核兵器禁止条約への日本の参加を見送る代わりに、核保有国と非保有国の橋渡し役を目指し、外務省が同年設置。米ロなどの保有国、日本などの核の傘に入る国、核廃絶を求める国の専門家十七人が参加した。

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◆保有国と非保有国の溝 日本、埋める努力を

 「賢人会議」がまとめた報告書は、核に依存する保有国と核廃絶を求める非保有国の考え方の違いを強調する内容だった。日本政府には、報告書が指摘した核軍縮を妨げる隔たりを、埋める努力が求められる。

 報告書は冒頭に、中距離核戦力(INF)廃棄条約の失効や、北朝鮮やイランを巡る核問題など、核軍縮に逆行する厳しい現状を列挙した。

 米ロが開発に力を入れる小型核にも言及。使用されれば、紛争の拡大や壊滅的な結果をもたらす危険性を指摘した。

 委員の浅田正彦京大教授(国際法)は「この五十年なかった状況。核軍縮が進まなければ、核不拡散もうまくいかなくなる」と危機感を募らせた。

 核軍縮が進まない最大の要因は、核保有により相手国の核使用を阻めるとする「核抑止」の考え方だ。賢人会議は、保有国の主張する自衛を理由とした核使用が、国際法に照らし合法かどうかも議論したが、結論は出なかった。

 報告書は、核保有を前提に核弾頭とミサイルを分けて保管することによる使用リスクの低減を「有益」と提言。先端通常兵器が核兵器に代替することは可能かどうかといった論点も盛り込まれた。

 最終的に、報告書は白石隆座長に一任する形で作成された。保有国や非保有国、核の傘に入る日本などで構成された委員の合意を得ようとすると、文言がまとまらない可能性があった。

 白石氏は「考え方の違う人が集まったが、合意の基盤だけでもつくりたいという意思は共有された」と語った。委員の秋山信将一橋大国際・公共政策大学院長は、保有国と非保有国の考え方の違いを巡り「両者の議論の対立が構造的にどうなっているのか、論点を絞ることが第一歩だ」と説明した。

 委員の朝長万左男(まさお)・日赤長崎原爆病院名誉院長は、双方の「橋渡し」を自任する日本政府に対し「あとは国が実行してほしい。それをやらないと意味がない」と、報告書に書かれた内容の実現に向けた取り組みを求めた。 (大杉はるか)

 

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