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【政治】

河野氏「ボールは韓国に」 GSOMIA失効まで2週間

 日本と韓国の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)が失効する二十三日まで残り二週間となった。河野太郎防衛相は「ボールは韓国側にある。賢明な判断が必要だ」と翻意を待つが、韓国側に目立った動きはない。米国も同盟国の足並みの乱れを懸念し、エスパー国防長官が近く訪韓して協定を維持するよう強く要求する方針だ。

 河野氏は八日の記者会見で、GSOMIAの失効に関して「日本の安全保障に直ちに何か影響があるということはない」と強調。一方で、弾道ミサイルを相次いで発射する北朝鮮や、軍事力を向上させて海洋進出を強める中国を念頭に「誤ったシグナルを周辺国に送ってしまうのは、日米韓の連携が必要なこの時期にデメリットだ」と指摘した。

 韓国メディアは、米国が失効期限を一時延長して、その間に日韓で解決策を模索する折衷案を検討していると報道。日本政府は協定継続が可能かどうかを検討しているが、あくまで韓国側が動くことが前提との立場は変えていない。

 韓国は破棄決定の撤回には、日本が対韓輸出規制強化を撤回することを条件に挙げているが、日本は応じない構えで、妥協案は見いだせていない。

 河野氏はタイのバンコクで十六日から始まる東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議に合わせて、日米、日韓の防衛相会談を開くなどして対応を協議する。 (山口哲人)

◆意図せぬ対立、政治が招いた 元内閣官房副長官補・柳沢協二さん

 戦争とは、国家目的を達成するための暴力であり、それを担う軍隊は政治の手段である。軍隊の失敗を政治が修正できても、政治の失敗を軍隊は修正できない。

 日韓の防衛交流は一九九〇年代の北朝鮮核危機を端緒として着実に進展してきたが、昨年起きた国際観艦式での旭日旗掲揚問題に加え、韓国海軍による自衛隊機への火器管制レーダー照射に続き、今年も防衛協力の象徴であったGSOMIAまで失効が迫り、逆流に見舞われている。問題は、こうした意地の張り合いは、韓国軍と自衛隊が意図したものではないことだ。

 軍同士は、やがて戦場で戦うかもしれない相手であっても、相互のプロフェッショナリズムへの敬意を共有し、それが無用な摩擦を防ぐ役割を果たしている。レーダー照射のような現場での問題は明確な敵意がなければ、軍同士の検証に委ねるほうがよほど改善に役立つのだが、政治主導による画像公開で引くに引けない状況を作ってしまった。

 GSOMIAによる戦術情報の交換は、ミサイル防衛(MD)が米軍のシステムに包含される中での運用であって、米軍抜きの日韓共同防衛が想定されない以上、致命的な影響はないとも言える。しかし、ここに至るまでには、日韓双方の防衛当局の息長い信頼構築という下地があった。

 前外相の河野太郎防衛相は「GSOMIAの失効は日本の安全保障に影響ない」と言うが、この事態は、韓国政府に原因があるとしても、両国の政治対立が招いたことに変わりはない。

 戦争論で有名なクラウゼヴィッツによれば、戦争は、国民感情、軍統帥の力量、政治の合理的判断という三つの顔を持っている。国民感情をあおれば対立が深まる。それをコントロールする政治の合理性が問われている。 (寄稿)

 

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