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【政治】

共通テスト 記述式見送りで調整 理念に現実追いつかず

公明党の斉藤幹事長(左)から記述式問題の導入見送りを求める要請書を受け取る萩生田文科相=5日、文科省で

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 二〇二〇年度開始の大学入学共通テストを巡って政府は五日、先月の英語民間検定試験に続き、国語と数学への記述式問題の導入についても見送りに向けた最終調整に入った。五十万人分に上る答案を公平に見ることはできないと、教育関係者や高校生からの風当たりは強まっていた。高い理念を掲げてきた文部科学省は打開策を示せぬまま、瀬戸際まで追い詰められた。 

▼防戦

 「問題の解決に向けて努力しているが、受験生の不安を解消できるか、どこかできちんと判断しなければならない」。五日の参院文教科学委員会。萩生田(はぎうだ)光一文科相は、記述式の導入に反対する野党議員の質問に神妙な面持ちで答弁した。

 英語民間試験の導入見送りが決まった先月一日以降、野党は記述式に次の焦点を合わせた。「五十万人分の採点をミスなく終わらせることができるのか」「自己採点が正確にできなければ受験生は出願先も選べない」−。高い公平性が求められる入試の採点を、民間企業に委ねることの是非も国会審議の場で追及した。

 防戦一方の文科省。ある幹部は「採点ミスをゼロにするのはほとんど不可能。野党の指摘は当たっている」と明かす。

▼外堀

 実は官邸側も記述式問題導入については後ろ向きだった。懸念を抱えたまま導入に踏み切って受験生らの混乱を招けば、新たな政権のリスクにつながりかねないためだ。官邸主導で行った英語民間試験の見送りが「世論から一定の評価を受けた」(政府高官)との感触を得たことも大きい。

 関係者によると、政権幹部は文科省幹部に対し「受験生が納得できる仕組みが作れないなら見送りも検討するように」と指示していたという。官邸筋は「冬休みに入る前に受験生を安心させてやるべきだ」と指摘する。

 官邸と連動するように、与党の動きも加速。公明党の斉藤鉄夫幹事長は五日午後に萩生田氏との面会を急きょ入れ、記述式の導入延期を求めた。公明党幹部は「関連予算が入った二〇二〇年度予算が閣議決定される前に流れをつくるべきだ」と述べた。

 自民党も提言をまとめ、六日に萩生田氏に提出する方向で、外堀は埋まりつつある。

▼変容

 「自らの力で考えをまとめたり、相手が理解できるよう根拠に基づいて論述したりする思考力・判断力・表現力を評価することができる」。文科省は記述式導入の意義を繰り返し強調し、マークシート式の大学入試センター試験からの変革を示す象徴として位置付けてきた。

 一方、同省や大学入試センターも採点の難しさは早くから認識。国語では解答の条件をいくつも設定して正答の幅を限定し、短い文章を記す出題を検討していた数学も、試行調査の低正答率などを受けて方針を変更し、主に数式で答えさせることにした。政府の教育再生実行会議が一三年に「知識偏重の一点刻みの試験からの脱却」を掲げた理念は薄らぎ、出題は変容していったが、「やらないよりはやった方がいい」(同省幹部)と突き進んできた。

 既に学校で記述式対策に取り組んでいる東京都の高校二年の男子生徒(16)は、導入見送り検討の報道を受け、こうつぶやいた。「英語の民間検定試験も記述式もやらないなら、今のセンター試験と何ら変わらない」

 

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