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【政治】

無電柱化達成に1500年? 識者「コスト10倍 変えないと」

昨年9月の台風15号の影響で多数の電柱が倒れ、長期間停電になった千葉県南房総市富浦町地区

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 昨年九月の台風15号による大規模停電を受け、防止策として電線を地中に埋める「無電柱化」に関心が高まっている。政府は今月まとめた中間検証報告書に無電柱化の推進を盛り込んだ。ただ、工費や工期がかさむ難点があり、従来型の電柱も増え続けている。現在のペースでは完全な無電柱化に千五百年を要すると識者は試算している。 (井上峻輔)

 台風15号の上陸では、千葉県を中心に最大で約九十三万戸が停電した。倒木や飛来物で約二千本の電柱が損壊し、復旧作業は長期化。電力供給網のもろさを露呈した。停電が最大五日間続いた千葉県睦沢町(むつざわまち)によると、町内で地中に電線を通した住宅地だけは六時間で復旧したという。

 経済産業省の有識者部会は今月、停電被害の報告書で「被害を事前に回避・軽減する観点から無電柱化の推進は重要」と指摘。政府は通常国会に提出する二〇一九年度補正予算案に関連費二百五億円を計上した。

 日本の無電柱化は他の先進国に比べ遅れている。電柱のない道路の割合を示す無電柱化率は最も高い東京二十三区でも8%にとどまり、ロンドンやパリの100%に遠く及ばない。

 一六年の無電柱化推進法成立を受け、国土交通省は普及に向けた対策を本格化。現在の計画では、二〇年度までの三年間で全国計二千四百キロの無電柱化に着手する。過去に最も多かった時期の倍の規模だ。

 東京都も、国会議員時代から無電柱化に関わる小池百合子知事が力を入れる。重点地区に位置付ける首都高中央環状線の内側の地域では、一八年度末までに歩道の幅が二・五メートル以上の都道の97%を無電柱化した。

 それでも国内の道路の総延長百二十万キロの中では、わずかな区間だ。電線の地中化は一キロ当たり五億三千万円の工費がかかり、工期も長い。このため、工費の安い電柱は今も年間七万本のペースで増えている。

 自民党の「無電柱化小委員会」は昨年十二月、政府への緊急提言をまとめ、電力会社による無電柱化計画の策定、工費を低減する技術開発を求めた。事務局長の宮内秀樹衆院議員は「国や自治体だけでなく、事業者も主体的に取り組んでほしい」と話す。

 無電柱化に詳しい放送大の松原隆一郎教授(社会経済学)は「今の進め方では無電柱化率100%になるまで千五百年かかる」と指摘する。「電柱を立てる方が事業者の負担が十分の一で済む現状を変えない限り進まない。国民が払う電気料金のあり方も含めた根本的な議論が必要だ」と訴える。

千葉県睦沢町の無電柱化された住宅地。台風15号で町内全域が停電する中、短時間で復旧した

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