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【政治】

<論戦ファクトチェック>首相「八ッ場ダムが被害防止に役立った」 でも利根川6ダムや遊水地も貯水

 安倍晋三首相は二十日の施政方針演説で、昨年十月の台風19号の際に「八ッ場(やんば)ダム(群馬県)が利根川の被害防止に役立った」と述べた。だが、当時は他の施設もフル稼働して水位を調節しており、利根川の治水で八ッ場ダムの効果だけを紹介するのは説明不足で、誤解を招きかねない。

 国土交通省関東地方整備局によると、台風19号で八ッ場ダムは約七千五百万立方メートルの水を貯留した。完成前に水をためて安全性を確認する「試験湛水(たんすい)」の段階にあり、担当者は「極めて低い水位から満水近くにまで達した特殊な状況だった」と説明。完成後も同じ量の水を貯留できるわけではないとの見方を示した。

 利根川上流域のその他のダム六カ所でも計約七千万立方メートルを貯留し、八ッ場ダムとともに群馬県内で水位を約一メートル下げた。担当者は八ッ場ダム単体でどの程度を下げたか「検証していない」とする。茨城、栃木、群馬、埼玉の四県にまたがる利根川中流域の渡良瀬遊水地も約一億六千万立方メートルの水を貯留した。

 経済・雇用関連でも首相演説には誇張が目立った。「九割近い中小企業で賃上げした」と強調したが、従業員百人未満の企業の調査結果を含んでいなかった。別の民間調査では、賃上げは六割近くにとどまる。

 内閣府によると、演説に引用されたのは厚生労働省の「二〇一九年賃金引き上げ等の実態に関する調査」で、百〜二百九十九人規模の企業が賃上げした割合は89%。三十人以上の一部企業も対象だが、集計中で反映されていないため、厳密には不正確な状態だ。

 日本商工会議所の昨年末時点での調査では、賃上げした中小企業は58%。人手不足でやむを得ず賃上げした企業が半数以上。首相は昨秋の所信表明演説に続き「八割の高齢者が六十五歳を超えても働く意欲がある」と主張した。本紙のファクトチェックでは「八割」は仕事をしている人に限って統計を再処理した数字。実際は高齢者全体の五割強にとどまった。 (中根政人、川田篤志)

 

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