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【埼玉】

伝統技法 後進に伝授 秋の叙勲県関係は190人

「一生この仕事を続けるだろうね」と語る小峯さん=川越市で

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 2018年秋の叙勲が発表され、県関係(県外在住を含む)では、社会のさまざまな分野で顕著な功績があった旭日章に36人、公務や公共的業務に長年従事した瑞宝章に154人の計190人が選ばれた。このうち、瑞宝単光章を受章した川越市の造園業小峯吉衛(きちえ)さん(71)に話を聞いた。

 川越市内を中心に庭造りで卓越した技能を発揮し続け、後進にも自ら開発した技を惜しみなく教えてきた。一九九三〜二〇一一年には造園職種の県技能検定委員を務め、検定制度の運営に大きく貢献した。

 川越で明治初年から続く造園業の家に生まれ、中学卒業後に父親に弟子入り。三十歳の時に父親が亡くなり、五代目を引き継いだ。

 日本庭園の設計や施工、維持管理が通常の造園業の仕事。それだけでなく、地元の古刹(こさつ)で年一回、盛大に開かれる茶会の一日だけのために、趣向を凝らした回廊や太鼓橋なども造る。

 川越市民が〇〇年、関東地方で初めて催した平安時代の貴族の遊び「曲水(きょくすい)の宴(えん)」では、高低差のない寺院の庭に五十メートルの曲がりくねった流路を造り、杯を二十分で流すことに成功した。

 曲水の宴は、杯が自分の前に流れ着くまでに和歌を詠む優雅な遊び。流れが速すぎても遅すぎてもいけない。「最初に水を流してみたら、十メートルで杯が止まっちゃう。これは困った。家で風呂に入っている時、わずかな段差の堰(せき)を作ることを思いついた。表層の水だけがすっと流れて、やったと思ったね」

 アイデアとチャレンジ精神はこれだけではない。竹べらを重ねて垣に蓑(みの)を掛けたように見せる「竹蓑垣(たけみのがき)」や、「水琴窟(すいきんくつ)」など失われつつあった伝統技法を何年もの試行錯誤の末に再興。一六年度には国の「現代の名工」にも選ばれた。

 苦労して編み出した技法も、五十年前に自ら組織した川越造園組合青年部の後進に惜しげもなく伝授する。県農業大学校の生徒に教えるため、精巧なミニチュアの箱庭も自作する。「雨で仕事が休みの時や夜に作る。若いもんが自分の技術を後世に伝えてくれる、と思うと楽しくてね。一生やってるだろうね」 (中里宏)

 

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