東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 埼玉 > 記事一覧 > 11月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【埼玉】

抜群の共鳴、うなり 秩父夜祭の太鼓手掛ける 坂本敏夫さん(80)

中村町会の太鼓の稽古を見つめる=秩父市で

写真

 毎年12月2、3日に開かれる秩父夜祭の勇壮な秩父屋台囃子(やたいばやし)の演奏に、耳を澄まして聴き入るベテラン太鼓職人がいる。東京都台東区の坂本敏夫さん(80)。数十年来、夜祭に参加する多くの町会の太鼓を手掛けてきた。「自分の太鼓の鳴りはどうか」。今年もちょっぴり緊張の夜祭を迎える。 (出来田敬司)

 坂本さんは、牛革を太鼓の胴に張る「太鼓張り」の職人。ケヤキをくりぬいて作った胴に、油分や水分を抜いた牛革をかぶせる。ばちでたたいて音を確かめながら、革の張り具合を調節する。「革が薄いと甲高くなり、厚いと低音になる。革が背骨側か腹側かによっても音が変わるんだよ」

 出身は茨城県潮来市。一九五一年、中学卒業とほぼ同時に、都内の太鼓製造販売会社「宮本卯之助商店」に入社した。一時帰郷して建設の仕事をした時を除き、約半世紀にわたって太鼓を作り続けてきた。

 手掛けた太鼓は年間三千張り以上。祭りの太鼓は秩父のほか、飯能や東京・青梅、神奈川・三浦、千葉・四街道など関東一円にわたる。寺や神社で使われるものもある。ただ「音に厳しいのは、やはり祭り用。担当者が納得するまで工房でチェックするからね」

 秩父夜祭を初めて見物したのは六二年。秩父駅に降り立った時から、激しいリズムを耳にした。「よくばちが折れず、革がやぶけずに演奏ができると思った。山車の中でどうやって演奏しているのか、幕をめくって見させてもらったこともあるよ」と話す。

 坂本さんの太鼓に対する町会の信頼感は抜群だ。秩父夜祭の関係者によると、山車を曳(ひ)く六町のうち四町の太鼓は、坂本さんが制作している。中近太鼓連の関係者は「軽くたたいても、胴が共鳴し、うなりを上げる。こんな技術を持つ職人は坂本さんをおいてほかにない」と断言する。

 今年も三日の夜祭大祭に観賞に訪れるという坂本さん。「太鼓がちゃんと鳴っているか、毎年気になってしょうがない。それで納得したら、山車を見て花火を見る。そうやって感動して秩父を後にするんだ」

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報