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【埼玉】

「共生」の道模索続く 住民5000人弱、半数が外国人 川口・芝園団地

「多文化交流クラブ」で会話を楽しむ日本人と外国人たち=いずれも川口市芝園町で

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 外国人労働者の受け入れを拡大する入管難民法などの改正案が衆議院を通過し、28日に参議院での審議に入った。受け入れ拡大の大きな課題は、増加する外国人と日本人が地域でいかに一緒に生活していくかだ。そんな変化に既に向き合ってきたのが、川口市の芝園団地。5000人弱の住民の半数以上を中国人を中心とする外国人が占める中、「共生」の道を探り続けている。 (井上峻輔)

 JR蕨駅から徒歩七分。都市再生機構(UR)が管理する団地の敷地を歩くと中国語の会話が聞こえ、掲示板には日本語と中国語の両方で書かれた案内が貼られている。団地内の商店街には、中華料理店や中国の食材が買える店が並ぶ。

 かつては、日本人と中国人のトラブルが相次いだ。

 団地は一九七八年に造成され、東京都心へのアクセスの良さなどで九〇年代後半から中国人が増え始めた。二〇一〇年頃には階段で便をしたり、ベランダからごみを投げ捨てたりする住民も現れ、ベンチに「中国人帰れ」との落書きがされるまで日本人との関係が悪化した。

 「日本には中国のように日が沈んでからも屋外で遊ぶ文化がなく、屋内で過ごす人が多い。夜、屋外では静かに過ごしましょう」

 団地自治会が作った新規入居者用の冊子には、こんな内容が中国語で書かれている。ほかにも「日本の住宅は足音が響きやすい」「階段や玄関前に私物やごみを放置しないように」など、団地生活のマナーをイラスト付きで紹介している。

 自治会事務局長の岡崎広樹さん(37)は「生活習慣の違う人が入ってくれば、日本人に不満と怒りがたまるのは当然だし、中国人には悪気がないから解決が難しい。その差を埋める必要がある」と狙いを語る。

 団地の事務所には通訳が配置され、ごみ捨て場は収集日や分類を色や中国語で分かりやすく示すように。祭りなどを通じて交流の場も増やしてきた。

 現在、目立ったトラブルはなくなった。自治会の取り組みは「多文化共生の先進的事例」として、今年二月に国際交流基金の表彰も受けた。しかし、岡崎さんは言う。「今は『共存』しているだけ。『共生』となると、今でも課題が多い」

  ◇ 

住民の半数以上を外国人が占める芝園団地。共生への模索は今も続く

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 二十三日午後、団地の集会所に日本人と中国人ら約四十人が集まった。一六年から毎月開かれている「多文化交流クラブ」だ。

 「出身はどこ?」「四川に近いので料理は辛いです」。日本人と中国人が相手を変えながら主に日本語で会話を交わしていく。

 クラブを主催するのは学生ボランティア団体の「芝園かけはしプロジェクト」。自治体と協力しながら、団地住民による中国語教室や太極拳体験などを企画してきた。代表を務める東京大大学院の円山王国(おうこく)さん(26)は「日本人と中国人の接点をつくりたかった。しがらみのない自分たちの方が、動きやすい」と語る。

 「日本語を勉強したくて参加した。会社では日本語を使うけど、ママ友も中国人が多くて生活で使う言葉が苦手で」と一年半前に引っ越してきた李〓〓(りてぃんてぃん)さん(33)。団地に四十年間暮らす坂本広仁(ひろひと)さん(82)は「ここで知り合った人と会った時は『ザオシャンハオ』(おはよう)と中国語であいさつしているよ」と笑う。

 ただ、二年半続けてきたからこそ、交流の難しさも見えてきた。円山さんは「日本人の参加者は固定化されてしまっている。そもそも、交流に関心のない人が多い」と吐露する。

 団地の日本人は、若者が就職や進学を機に出て、高齢者が多い。一方、中国人は子育て世代が中心だ。「世代が異なり、生活の中での関係が生まれづらい。日本人でも自治会に入らない時代に『接点』をつくるのは難しい」と岡崎さん。苦心して関係を築いた中国人が数年で引っ越してしまうことも悩みだ。

  ◇ 

 入管難民法などの改正は、各地に芝園団地と同じような課題を生みかねない。

 芝園団地に住む中国人は都内のIT企業に勤務する比較的高収入の人が多い。外国人の生活状況が違えば、地域にはまた違った対応が求められる。

 上田清司知事は二十六日の定例会見で、外国人の受け入れには労働条件だけでなく日常生活も重要だとして「生活習慣をどこで学ぶのか。日本語教育の責任をどこが最終的にもつのか。審議が十分されていない」と述べた。

 円山さんは「問題が起きた時の対応は、地域に押しつけられてしまうのではないか」と危惧し、国が受け入れ態勢を整備する必要性を指摘する。

※ 〓は女へんに亭

 

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