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【埼玉】

悲惨な事故防ぐには? 10年連続交通死ゼロ 鳩山町を探る

デマンドタクシーを利用する女性。高齢者の移動手段として存在感が増している=鳩山町で

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 昨年の交通事故死者数が全国で過去最少を更新した一方、県内は175人と前年比2人減にとどまり、都道府県別ではワースト3位だった。そんな埼玉にあって、鳩山町が3日、交通死亡事故ゼロ連続10年を迎えた。悲惨な事故はどうしたら防げるのか。現場を取材し、そのヒントを探った。 (森雅貴)

 大きな道路がなく、信号機にもなかなか当たらない。ただ、交通量が極端に少ないわけでもない。鳩山町を実際に車で走ってみても、特別な場所という印象は受けなかった。町内は鉄道が走っておらず、移動手段は車に頼らざるを得ない。

 人口自体が県内六十三市町村中五十四位の約一万四千人と少なめとは言え、死亡事故ゼロ十年、三千六百五十三日は、皆野町の二千九百九十五日(三日現在)を引き離し、県内ではトップの長さだ。

 町を管轄する西入間署によると、町民からは「スピードを出している車がいて危ない」などと速度違反の取り締まりを求める声が多い。こうした要請は珍しいといい、署は「町民の意識の高さが死亡事故が少ない要因では」と分析する。

 町が要因の一つに挙げたのは、町内で運行する「デマンドタクシー」の存在だ。町民なら誰でも一回百円で町内全域で利用できる。二〇一二年に本格運行を始め、一六年には年間の利用が約一万三千回に上った。利用者は年々増加しており、ほとんどが高齢者だという。

 同様の「デマンド交通」は県内の他の市町でもあるが、鳩山町は高齢者の乗り降りまで手厚くサポートしているのが強みだ。昨年一月、秩父市から同町に引っ越してきた黒沢千代乃さん(69)は「車はあるけど、事故が怖い。雪や雨の予報の時によく予約を入れる。助かる」と話す。

 県警によると、県内の昨年の交通事故死者百七十五人のうち、高齢者は半数近い八十三人。警察庁がまとめた全国データでも全体の過半数を占めた。

 前年比三十二人の大幅増でワースト二位になった千葉県も、死者百八十六人中九十七人が高齢者。車の運転中に事故に遭ったケースが増えたのが特徴という。

 警察が免許証の自主返納を呼び掛ける一方、社会全体の高齢化や路線バスの廃止などで高齢者が自らハンドルを握らざるを得ない事情もある。

 城西大の庭田文近(ふみちか)准教授(交通政策)は「地方では、車がないと生活が成り立たない場合もある。デマンド交通のような新たな移動手段の必要性はますます高まってくる」と話す。

 鳩山町の町民意識の高さと高齢者への配慮は、事故を防ぐ重要な鍵と言えそうだ。

 

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