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【埼玉】

<移住者新時代>埼玉発 古き町並み、次代へ継ぐ

まちぶんの本拠地「たまりんど」で話し合う(左から)平山さん、田中さん、毛利さん

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◆小川町で地元住民と活動・NPOまちぶん

 東武東上線とJR八高線が乗り入れる小川町。市街地の曲がった道に合わせて「く」の字に建てられた古い五軒長屋がある。この珍しい建物がNPO法人小川町創り文化プロジェクト(まちぶん)の本拠地だ。

 まちぶんは「小川の町並みを残したい」と意気投合した地元住民と移住者たちが二〇一六年に結成した。専門知識のあるメンバーらが、町の古い建物六十軒を調査した報告書をまとめたほか、酒蔵や料理屋、古民家などをイラストで紹介する町歩き地図を発行。歴史的建物が取り壊されると聞くと、所有者に待ったをかけて有機野菜食堂に改装するきっかけをつくるなど多彩な活動を続ける。

 代表理事は小川町の旧家で、五軒長屋の所有者でもある田中克彦さん(67)。小川は江戸時代から和紙や織物の集積地として栄え、料理屋や造り酒屋、商家の蔵など古い建物が多く残る。

 だが、田中さんには「後継者難で商店が空き家になるなど町並みがなくなっていく」との危機感があった。明治中期以前に建てられた五軒長屋は真ん中の三部屋が空いていて、建物を残すために屋根を改修した。

 その部屋を借りたのが、まちぶんの事務局長を務めることになる平山雅士さん(57)だった。平山さんは一五年六月に雑貨店兼コミュニティースペース「たまりんど」をここに開業。当時は東京都内に住む塾講師だったが、間もなく隣の寄居町に建築ライターの妻友子さん(58)と移住した。

 平山さんが店の開業前に室内を改修中、今はまちぶんの中心メンバーで先輩移住者の毛利公昭さん(67)がふらりと訪問。やがて古い建物に興味を持ち「町並みを守りたい」との共通の思いを持つ人たちが集まり勉強会を重ねたことが、まちぶんの結成につながった。

 毛利さんは〇七年、ふじみ野市から小川町のログハウスに移住。大手ゼネコンで高層ビルの施工図面を担当し「始発から終電まで働いた」という。「田舎暮らしをしたい」との思いが募り、早期退職した。

 移住後、すぐに町の自然保護グループに参加。自治会活動にも積極的だったことで地域住民にも信頼され、行政区の副区長、区長も歴任した。小川町移住サポートセンターを訪れる若い世代に、不動産物件になっていない空き家を紹介し、改装の助言もしている。

 毛利さんは「小川町は若い世代が減り、消滅可能性もあるとされる。住民が楽しくやっていれば、若い世代も興味を持ってくれる。知ってもらえるきっかけが必要」と町の将来を見据えている。

明治時代に建てられた趣のある五軒長屋=いずれも小川町で

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 平成が終わり、令和の時代が幕を開けた。「人生百年時代」がうたわれる中、新たな生き方を模索する人たちが増えている。経済優先でなく、自由とやりがいを求めて、埼玉、茨城、栃木、群馬の関東四県に移住した人生のベテランたちの「新時代」を紹介する。

◆取材後記

 「あの人は三十年前に来た。地元の人じゃない」。ある古い町でこんな話を聞き、絶句したことがある。一方の小川町は、平山さんによると「よそものが町を良くしようと言っても、許容する風土がある」という。移住者の活躍には、そんな土地柄との相性の良さもあるのだろうと思った。 (中里宏)

 

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