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【埼玉】

<ひと物語>小鹿野で蜂蜜酒造り 町地域おこし協力隊員・工藤エレナさん

丈君を抱きかかえ、蜂蜜酒造りへの思いを語る工藤さん=いずれも小鹿野町で

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 神社や小道、道端にたたずむ猫や地蔵。それに生後間もない赤ちゃんの寝顔も。小鹿野町の風景写真に柔らかい文章を添えた人気ブログ「おがの徒然(つれづれ)日誌」は、ロシア出身の町地域おこし協力隊員工藤エレナさん(30)が書き記している。

 工藤さんは一月、IT会社経営の夫宏樹さん(34)、生後十カ月の長男丈君と東京都内から移住してきた。「スーパーや学校が近くて、人が温かくて気さく。もっとも、移住の目的は蜂蜜酒(ミード)造りなんですけど」。滑らかな日本語で陽気に語る。

 工藤さんはモスクワ生まれ。四歳の時、コンピューターの研究者の父アレキサンダーさん(59)が、福島県会津若松市の大学に赴任するのに伴い来日した。幼い頃は兄二人に交じって草野球や川遊びに興じ「自分が外国人だと意識することはなかった」と振り返る。

 東京都八王子市に転居し、高校卒業後いったんは都内の有料放送会社に就職。その後、大好きな日本酒を極めようと東京農業大に入学したが、学費が賄えずに途中で断念。大手IT企業でインターネット通販のコンサルタントとして活躍した。

 二十三歳のころ。福島県の旅館を訪ね、ふと地場産ミードのPRポスターを目にした。旅館の女将(おかみ)に尋ねると「じゃあ、そこの社長さんに会いに行こうか」と、予期せぬお誘いが。訪れたのは、同県喜多方市の「峰の雪酒造場」。黄金色の蜜酒の、バラのような香りに魅了された。

 ミードは、蜂蜜に水を混ぜ、酵母で発酵させてつくる醸造酒。「甘いだけと思われがちだが、酸味のあるすっきりとした味わい」と工藤さん。日本での消費はそれほど一般的ではないが、世界的にはビールやワインと並んで三大古代酒とも言われる。

 工藤さんは二〇一七年から、宏樹さんのIT会社の一部門として峰の雪製のミードをネットで販売。アニメ柄の独創的なラベルも人気を博し、年間で五千〜六千本を扱うまでになった。その一方で、東京五輪・パラリンピックが開催される二〇年の春を目標に、自家でのミード醸造を思い描いている。

 「山と蜂蜜と名水に恵まれ、『秩父』というブランドもある。近くには日本酒やビール、ワイン、ウイスキーの工場もあり、酒造りにはもってこいの場所」。ニコニコとほほ笑む丈君を抱きすくめながら、工藤さんは新天地で新たな挑戦に打って出る。(出来田敬司)

<くどう・えれな(本名パスコ・エレナ)> ロシア・モスクワ生まれ。4歳の時、一家で来日する。東京都立国際高校を経て、東京農業大国際食料情報学部へ。自ら「のんべえ」と称し、夫宏樹さんとは都内の居酒屋で出会う。現在は小鹿野町地域おこし協力隊員として、町外の若者の移住を後押ししている。

工藤さんがネットで販売している蜂蜜酒(ミード)

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