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【埼玉】

自己免疫疾患 美術コンテスト入選 川越の横山和子さん「米寿すぎて、不思議な気持ち」

自作の和紙ちぎり絵を手に「入選は最後の打ち上げ花火のようで、不思議な気持ち」と語る横山さん=川越市で

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 自己免疫疾患を抱える人に前向きに生きてもらおうと、製薬会社アッヴィ(東京)が主催する美術コンテスト「アッヴィ 自己免疫疾患 アートプロジェクト『PERSPECTIVES』」で、川越市の横山和子さん(88)の和紙ちぎり絵作品が佳作に入選した。関節リウマチで闘病を続ける横山さんは「家族から米寿のお祝いをしてもらった後に、今度は表彰されて、不思議な気持ち」と喜んでいる。 (中里宏)

 コンテストには全国から八十一点の応募があり、横山さんの入選作品は「光ありて」と題した和紙ちぎり絵の三部作。幼少期から好きだった花火を描いた二枚と、月見を描いた一枚で「まだ指の動くうちに、子どもの時の思い出を形に残したかった」との思いで制作したという。

 描かれた子どもは、幼い頃の自分と兄。「どれも後ろを向いていて、ちょっと寂しそう」と話す。

 家庭の事情でつらい少女時代を過ごした。その後の人生も「山あり谷あり」だったが、小さい頃に祖母に繰り返し聞かされた「自分らしさを探しなさい」という言葉を胸に、前を向いて生きてきた。

 ちぎり絵を始めたきっかけは、七十三歳まで介護職として働いていた東京都内の病院勤務時代。通信教育のちぎり絵講座に申し込み、教材の着色和紙が大量に送られてきたが、仕事が忙しく続けられなかった。退職後、川越市に住む長女と同居し、川越駅近くのちぎり絵教室に週二回通った。

 「八十歳になる前に、生きたことの証しを残したい」と一念発起して出版にも挑戦。一年以上かけて思い出や日々の暮らしで感じたことなどをみずみずしい感性でまとめ、二〇一二年一月にエッセー集「シャボン玉の独り言」を出版した。

 だが、この直後に病魔に襲われた。ある朝、突然「両手やひざをナタで切られたような痛み」で起き上がれなくなった。

 再び指を動かせるようになってから、作った和紙ちぎり絵が病院の受付に飾られ、励みになった。「幼い頃のおぼつかない記憶をたどるうち、月明かりと花火の光が浮かんだ」のが、今回の応募作品だった。

 見事、入選を果たし「自分にとって最後の打ち上げ花火みたい。人生の終わりにふさわしい」とユーモアを交えてほほ笑んだ。

佳作に入選した横山さんの作品「光ありて」の3部作(アッヴィ自己免疫疾患アートプロジェクト事務局提供)

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