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【埼玉】

所沢・中2刺殺事件きょう1週間 募ったわだかまり 噴出か

少年の逮捕を受け、記者会見する市教育委員会の幹部=6日、所沢市役所で

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 所沢市の市立中学二年本郷功太郎さん(13)が殺害され、同級生の少年(14)が逮捕された事件は十二日、発生から一週間を迎える。捜査関係者によると、少年は動機について「以前、教科書を隠されたことを否定され、けんかになった」とし、「つねられたこともあった」などと供述。県警は本郷さんへの積み重なった思いがあったとみて、背景や動機の解明を慎重に進めている。仲が良かったともみられていた同級生同士がなぜ、けんかで収まらず、一線を越えてしまったのか。 (浅野有紀、森雅貴)

 二人を知る同級生の女子生徒(13)は「いつも一緒にいるイメージだったのに」と、驚きを隠せない。校長によると、二人は同じ小学校出身。ともにおとなしい性格で中学では卓球部に所属し、二年で同じクラスになって一緒にいる時間が増えた。事件当日の五日も普段通りに登校し、二人が廊下で話す様子を同級生が見ている。

 県警によると、少年は調べに対し、以前から見当たらなくなっていた教科書について「『隠した』と問い詰めたら否定され、けんかになった」と供述。県警は口論から、突発的に台所から包丁を持ち出して刺したとみている。

 少年の犯罪心理に詳しい碓井真史(うすいまふみ)・新潟青陵大大学院教授は「真面目な子ほど、ストレスの吐き出し方が分からない。その点に関して本人や周囲がうまく対応していれば、事件は起きなかったのでは」とみる。

 所沢市教育委員会によると、少年は事件の一カ月ほど前、担任教師に「(本郷さんに)五月中旬から二十回以上つねられている」と相談し、腕にはつねられた痕も確認された。ただ、相談の二日後に少年が「『もうやらない』と言われたので大丈夫」と話したため、学校は本郷さんに指導しなかった。市教委は、いじめの有無などを第三者委員会を設置して調べる方針だ。

 元家裁調査官で、NPO法人非行克服支援センター相談員の伊藤由紀夫さんは「十四歳はまだ子ども。大丈夫かどうかの見極めは難しい。もう少し詳しく二人から聞き取りをしても良かった」と指摘する。

 伊藤さんは四十年近く、非行少年に寄り添ってきた。最近は高齢化や核家族化で、子どもたちが親族らの葬式に出席する経験が少なく、人の死と向き合う機会が減っているとし「命の重みを感じにくくなっている」と危惧する。

 今回の少年も「刺したらどうなるかまでは考えられなかったのではないか」と推測。「家庭や学校で、成績や進学先の方が重要とされ、交換がきかない命について、話し合う機会が薄れているのでは」と話す。

 県内では、二〇一六年に東松山市で十六歳の少年が知人の少年五人に暴行され死亡した事件を受け、一八年度に小中高校の生徒指導の担当教諭が、生徒の様子に変化があったかなどに目を向け、適切な対応を学ぶ研修を始めたばかり。

 今回の所沢の中学でも、同年度から「命を守るための教育プログラム」として、命を考える講演、新入生全員とスクールカウンセラーらとの面談などに取り組んできた。その直後に事件は起きた。

 伊藤さんは「学校と家庭という狭い世界に身を置く子どもたちは、誤った解決策を正しいと思い込みやすい」と説明。「子どもが『もっとSOSを出してもいいんだ』と思える雰囲気を大人がつくることが必要だ」と話している。

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