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【埼玉】

<参院選>改憲議論の足元で(2)国連に届け9条の精神 日高の市民グループ

今後の活動方針について話し合うシルヒトマンさん(右から2人目)らSA9のメンバーたち=日高市で

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 五月、米ニューヨークから届いた一通の国際郵便に、日高市の市民グループ「SA9キャンペーン」は歓喜に沸いた。

 「多極化した世界で唯一の包括的で普遍的な組織として、国連は中心的な役割を果たしている。私たちは、あなたたちのような革新的な取り組みも必要としている」

 差出人は、フランスの国連大使。文中の「あなたたち」とは、SA9のことだ。「Second Article 9(九条を支持せよ)」の略で、国連総会で憲法九条の支持決議を採択させることを目標に二〇一七年末から活動している。

 メンバーは同市に住むドイツ人の歴史学者クラウス・シルヒトマンさん(75)と日本人三人。大使からの手紙は、シルヒトマンさんが送ったSA9の活動を紹介するメールに対する「サプライズ」の返信だった。

 「返事が来るとは期待してなかった。すごいことで、本当に喜んでいる」とシルヒトマンさん。メンバーの一人で東邦大非常勤講師の阿部一智(かずとし)さん(67)も「人口五万人の小さな町での活動を国連大使が認め、返事をくれた。普通はそんなことしないですよ」としみじみと語る。

 ◇ 

 一九九二年の来日前から平和運動に長年携わってきたシルヒトマンさんには、確信がある。「憲法九条は、国連を強化する唯一の武器となり得る」

 四五年に発効した国連憲章は、各国が自国を守る権限の一部を国連に委譲し、その傘の下に入ることで自国の安全を守る集団安全保障体制を目指した。だが、各国の利害が絡み合っていまだに実現していない。「国連憲章の精神を七十年以上も守り続けているのが憲法九条」というのがシルヒトマンさんの持論だ。

 志を同じくする市内の仲間と出会ったことで始まったSA9の活動。国連総会が九条を支持する決議案を採択し、各国が交戦権を国連に委譲し、国連警察の創設につなげていく−。そんな「永続的世界平和へのロードマップ」を思い描く。

 問題は、どの国に決議案を提出してもらうか。加盟国ならどの国でも提出できるものの、理解を得るのは簡単ではない。

 まずは日本国内にある各国の大使館を回った。非武装を掲げる小国を中心に連絡を取ったが、ほとんどが門前払い。対応してくれたのは二カ国だけ。そのうちパナマ大使館では、日本の政権が改憲を目指していることから「内政干渉になりかねない」と断られた。

 期待できるのはバチカン。世界中に影響力を持つローマ法王宛ての手紙を受け取ってもらえた。今後の目標はローマ法王と、九条への理解が深いマレーシアのマハティール首相の二人との面談を実現することだ。

 ◇ 

 「小国に頼むだけでは前進しない」と思い切って国連安保理の常任理事国五カ国にも一斉に連絡。唯一返ってきたのがフランスからの手紙だ。内容は、平和維持や国連の重要性が書かれているだけで、国連総会への働き掛けには言及していないが、国連大使がSA9の活動を知り、評価した意義は大きい。

 メンバーの一人で政治学者の大森美紀彦さん(67)は「フランスから返事があったことは今後、フランス語圏の国々に働き掛ける際に意味を持つ」と語る。

 一方、国内では九条改憲の動きが進む。「世界に九条の精神を広めようとしているのに、日本で変えられては」とメンバーは危機感を抱く。

 来日以来、九条を取り巻く動きを見続けてきたシルヒトマンさんは、やや楽観的だ。「改憲に反対する人は増えている。海外から軍事的貢献を求める圧力が強まる中、日本の市民や国政野党は頑張っている」

 まだ少し苦手な日本語で付け加えた。「日本人は九条のために鼻が高いにすること、いいです」

 

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