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【埼玉】

知事選 中山間地の買い物難民 人手や物流に課題山積

秩父の中山間地を回る「移動スーパーとくし丸」。買い物に悩む地域住民からの信頼は厚い=秩父市で

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 荒川の源流に当たる秩父市の大滝地区。山あいの集落の前で、ポップなデザインの軽トラックが止まった。運転手の男性(53)が荷台を開くと、中には野菜、肉に調味料、トイレットペーパーなどがどっさり。近くの主婦(74)が駆け寄り、商品を品定めした。

 「このお菓子、食べ始めると癖になるの」。主婦は顔なじみの運転手との会話を楽しみながら、大根、巻きずしと黒糖のあめなどを購入。「ここから秩父の市街地まで行くのに一時間近くかかるでしょ。買い物はここに頼り切っているの」

 軽トラックは市内のデパート「矢尾百貨店」が運行する「移動スーパーとくし丸」だ。食品や日用品など約四百品目を積み込み、秩父市吉田地区や横瀬町芦ケ久保地区など、商店が少ない秩父の山間部を中心に回る。利用者の多くは七十〜九十代の高齢女性だ。

 「とくし丸」の名前は、社会奉仕などを意味する「篤志」から。スーパーの撤退などで買い物に不自由している地域の住民を救おうと、二〇一二年に徳島県で始まり、本部と各地の大型店が契約する形で全国に広がった。現在は計四百台が地域を回っている。

 「毎週決まった日に来てもらえるのがいい」「総菜もあるから料理の手間が省ける」。一六年にスタートして以降、秩父でも利用者の評判は上々だ。最近は高齢者による自動車事故が社会問題化している影響で、運転免許証の返納を検討している人からの問い合わせも相次いでいる。

 ただ、課題もある。矢尾百貨店は現在、軽トラック二台態勢。山間部は道路が川に沿って延びているため、尾根を越えての移動は難しい。とくし丸を担当する町田真一リーダーは「ルートの見直しなどもしているが、回りきれない集落もある」と残念がる。

 経済産業省が一四年にまとめた「買物(かいもの)弱者等に関する報告書」によると、日常の買い物が困難な人は全国推計で約七百万人。農村・山間部では「過疎化が進み商圏人口を維持できる商店がないのが問題」とする。

 一方、県は一七年にまとめた「県商店街経営実態調査報告書」の中で、「販売に充てる人が足りない」と対策が進まない原因を分析。ボランティアやシルバー人材を積極的に活用するよう提言した。

 秩父市では、最新の技術を応用した新たな取り組みも始まった。ドローンだ。市は今年一月、IT大手「楽天」(東京都)などと共に、荷物の配送サービスの実証実験を実施。紙皿や薬などを積み込み、約三キロ離れた目的地に空輸することに成功した。

 ただ、重量制限や安全性、法整備など本格導入にあたっては課題も山積する。市企業支援センターの担当者は「ドローンを活用したまちづくりを推進しているが、物流の事業化までには至っていない」と漏らす。 (出来田敬司)

     ◇ 

 県の人口は県南を中心に流入が続き、七百三十万人を超えた。一方、県北や県西、秩父地方では人口減少が進み、さまざまな問題が表面化。今後は県全体でも人口が減少に転じると予測される。買い物弱者や高校の統廃合、移住政策の観点から、そうした時代の地域活性化の在り方を考える。

 

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