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【埼玉】

知事選 県立高の統合 地域づくりへの影響も

統合案が示された県立4高校の校名看板と閑散とするJR児玉駅前(コラージュ)

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 十二日午後、休日にもかかわらず、県北部で群馬県境に近い本庄市児玉町のJR児玉駅前を歩いている人はほとんどいなかった。時折、車が通るだけで、シャッターが下りたままの商店や空き店舗が目立つ。

 上り電車を待っていた男性会社員(23)に話し掛けると「ここいらは、どんどん元気がなくなっている」と嘆きの声。「買い物は群馬の高崎まで出る人が多い。若者が遊びに行くのも市外なので、いつも閑散としているんです」

 現在の本庄市は、旧本庄市と旧児玉町が二〇〇六年に合併して誕生した。しかし、少子化の進行などで合併時に約八万二千人だった人口は、約七万八千人に減少。住民らによると、特に児玉地域は、市の周辺部的な位置付けとなったことで活気が失われたという。

 県教育委員会が、児玉地域にある児玉高と児玉白楊(はくよう)高の県立高校二校を統合する案を示したのは六月。少子化が進行する中で、適正な学校規模を維持するのが狙いだという。案では、現在百三十四校ある県立全日制高校を三期に分け、二九年までに十〜十三校削減する。第一期分として、児玉の二校のほか、県南西部の飯能市にある飯能高と飯能南高の統合案も盛り込まれた。いずれも新校は二三年の開校を予定している。

 「こんな削減を許してはいけない」。児玉高OBの男性(70)は憤る。一三年にも旧本庄市地域で県立本庄北高が閉校になったばかり。男性は「『またか』という印象。合併後、ここいらは加速度的に元気がなくなっている。このままでは県北部はますます衰弱してしまう。行政の無策ぶりに腹が立つ」と危機感を示す。

 高校の統合案について、本庄市と周辺の美里、上里、神川の児玉郡三町の各議会は、県教委に慎重審議を求める意見書を提出。ただ、市内にはほかに県立一校、私立三校の高校があるためか、反応はやや鈍い。児玉白楊高OBの原田信次・美里町長が「できればしてほしくないが、県立高の教育環境を維持するにはやむを得ないのでは」と話すなど、容認ムードも漂う。

 一方、飯能市と同市議会は案の撤回を求める文書を県教委に提出。公募した市民と県職員を含めた協議会を設置し、統合案について話し合いを始めた。同市にも人口減の波は押し寄せており、〇六年には八万四千人を超えていたが、現在は八万人を割った。市教委の担当者は「市域に人を呼び込む施策を打っている真っ最中。中学生の進路選択の幅が狭まるのは困る」と説明している。

 明治大農学部の小田切徳美教授(地域政策論)は「近年は大都市と地方都市の間だけでなく、地方圏内での格差が生じている。高校は、来年始まる地方創生の第二期対策で政府が地域づくりの拠点として重視しており、統廃合の影響は大きい」と指摘する。

 人口減少の象徴とも言える廃校。その影響は、教育環境だけにはとどまらない。どう対応するかは行政の課題でもある。 (渡部穣、加藤木信夫)

 

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