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【埼玉】

知事選 移住促進 「縮む社会」にあらがう

「お試し居住住宅」での暮らしを楽しむ遠藤彰さん(右)と妻の陽子さん。行政による移住施策の真価が問われるのはこれからだ=秩父市で

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 西武秩父駅から徒歩十二分。武甲山を間近に望む閑静な市街地に、縦格子の外観が特徴的な木造住宅がある。秩父市が運営する「お試し居住住宅」だ。東京都日野市の遠藤彰さん(65)、陽子さん(59)夫妻は八月上旬、ここで五泊六日の秩父暮らしを体験した。

 この住宅の利用は三回目だ。彰さんは「今回はいい物件がないか見に行ったり、新しい飲食店を開拓したり。次は冬にこの住宅を利用し、秩父の寒さを体験しようと思ってます」と話す。心は既に念願の秩父暮らしに傾いている。

 二人が秩父にはまったきっかけは五年前のテレビドラマだ。画面に映し出された山の自然に引かれて秩父を旅するようになり、三十四カ所の霊場を回る「札所巡り」も体験した。「蒸気機関車や秩父夜祭、雲海にウイスキー。秩父にはオンリーワンがいくらでもある。それなのに、市はPRが上手ではないのかな」と彰さん。

 お試し居住住宅は二〇一七年にオープン。秩父への移住を検討している人に、市が2LDKの二階建て物件を無料で貸し出す。利用期間は三〜七日。冷蔵庫や調理器具、自転車など家財道具も備え、実際に寝泊まりする。観光スポットだけでなく、近くのスーパーや個人店、病院などを利用することで、秩父での暮らしを試してもらう。

 住宅を開設した背景には、同市が抱える深刻な人口減がある。八月一日現在の市の人口は六万二千二百七十六人。周辺三町村と合併した〇五年四月以降、一万四百人以上も減った。一方、お試し居住住宅の利用者は七月末現在、六十四組百七十四人。移住に結び付いたのは八組十三人にすぎない。

 県と埼玉大が、秩父市や川越市、小川町など七市町の住民を対象に実施した共同意識調査(一七年)によると、秩父市では「今後も住み続けたい」と答えた人が八割近くに達し、調査した市町で最多となった。ただ、「交通の便が悪い」「医療が不十分」などインフラの乏しさを指摘する声も目立った。

 秩父市は、外から人を呼び込もうと、新たな取り組みを始めている。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)だ。昨年、姉妹都市の東京都豊島区と、市内にサ高住「ゆいま〜る花の木」を新設することで合意。同区内に住む健康なシニア層を中心に、ゆいま〜るへの転居や秩父と都内の二地域での居住を呼び掛ける。

 ゆいま〜るは、市の委託を受けた都内のシニア向け住宅運営会社が運営。木造二階建てに一〜二人用の居室が二十室あり、独居や夫婦二人暮らしの家庭を想定している。十一月中旬の入居開始に向け、希望者の募集を始めたところ、これまでに三組四人の入居が決まった。

 今も人口増加を続ける県内にあって、秩父地域では高度経済成長期の昔から人口減少に悩まされてきた。今後、県全体に到来すると推定される「縮む社会」。行政がどのように取り組むべきかのモデルケースになるかもしれない。 (出来田敬司)

 

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