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【埼玉】

知事選 現場からの声(下)子どもの貧困 さいたまユースサポートネット・青砥恭代表理事(70)

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 貧しさを背景に生きづらさを抱える子どもたちの居場所をつくり、学びを支える。さいたま市のNPO法人さいたまユースサポートネット代表理事の青砥恭さん(70)らがいち早く手掛けた取り組みは、全国に広がる。

 −子どもの貧困対策が動きだして久しい。手応えは。

 国が貧困の存在を認め、対策に乗り出してからおよそ十年がたった昨年四月、非常にショッキングな民間調査データが公表された。学校教育に対する保護者意識を調べた結果、経済的に豊かな家庭の子どもほど、よりよい教育を受けられるのは「当然だ」「やむをえない」と答えた人が六割を超えた。教育格差を容認する人が、十年間に二割近く増えた。貧困を自己責任として受け止める意識がかえって強まっているのではないか。

 −社会全体の問題として貧困が捉えられていない、と。

 例えば、片方に進学競争が繰り広げられている中高一貫校や中等教育学校などがあり、もう片方に公立中学校の就学援助率の上昇があり、双方の間に貧富の大きな溝ができている。進学校に行く子どもたちさえも階層化している。非正規雇用の急増を背景に、年収二百万円以下のワーキングプア層が労働者全体のおよそ二割を占める時代だが、市場化された競争教育システムの中で、初めから勝負がついているようなものだ。

 −対策として重要な視点は。

 相対的貧困の状態にある子どもは七人に一人、一人親世帯では二人に一人と深刻だ。もちろん、最低賃金の引き上げやさまざまな手当の充実、教育の無償化といった経済面の支援は欠かせないが、僕らは教育、地域での支援を重視してきた。さいたま市を中心に学習支援教室や居場所をつくり、二千人を超す貧困層の子どもを支えている。中学校で不登校になったり、高校でつまずいて中退したりして引きこもり、社会体験や生活体験の乏しい三十代までの若者の自立も後押ししてきた。大事なのは、地域で包括的に支えるシステムづくりと考えている。

 −学習支援教室や子ども食堂などの民間の受け皿が増えている。好ましい傾向では。

 学習支援については四年前に施行された生活困窮者自立支援法で自治体の支援制度として位置づけられ、広がってきた。ただ、学習機会の場をつくればよいと安易に考えているようで気にかかる。僕らがやってきたのは、例えば学校生活での悩みに耳を傾けたり、不登校の子どもにアウトリーチして親子の相談に乗ったり、異世代との交流の場を用意したりして、地域ぐるみのネットワークをつくり、包括的に支援することだ。

 −行政に求めたい施策は。

 ソーシャルワークの知識とスキルを持った専任の教員、いわば地域連携担当の教員を小中学校に一人ずつ配置すること。困難を抱える子どもや家庭を発見し、教員間はもとより、学校と福祉、地域の資源とをつなぐ役割を果たす。地域の連携で支える体制をつくることが大切だ。自宅と職場を往復するだけだった大人も、子ども食堂のような居場所づくりに参加して地域に関心を持ち始めている。人口急減につながる貧困化を食い止めるためにも、地域社会を紡ぎ直し、豊かにしようとする市民の機運をどこまで支えられるか、行政の本気度が問われる。 (聞き手・大西隆)

   ◇

<あおと・やすし> 1948年、松江市生まれ。元埼玉県立高校教諭。埼玉大、明治大などの講師も務めた。2011年、NPO法人さいたまユースサポートネットを設立し、居場所のない子どもや若者を支援。一般社団法人全国子どもの貧困・教育支援団体協議会代表理事。著書に「ドキュメント高校中退」など多数。

 

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