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【埼玉】

<ひと物語>「猫住宅」で新たな活路 第一住宅社長・鈴木智恵さん

キャットウオークや換気扇付きの猫トイレなどを備えた「猫住宅」のリビング=川口市で

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 猫が歩いて室内を一周できるキャットウオークを備えたリビング。階段とステップを組み合わせて猫に運動を促すほか、所々にくつろげる場所も。各部屋に専用ドアを設け、猫トイレには換気扇まで取り付けた。蕨市の不動産会社「第一住宅」が今春販売を始めた、猫と快適に暮らせる家「猫住宅」。発案者は、社長の鈴木智恵さん(38)だ。

 「一番のお薦めはキャットウオークのガラス部分。下から足を見上げられて“肉球マニア”にはたまらないでしょう」。鈴木さんは声を弾ませる。自身も猫二匹と長く暮らす筋金入りの猫好き。だが、猫住宅の販売は自らの歩みと、思いも寄らぬ社長就任がきっかけだった。

 大学卒業後、一般企業に就職したが、数カ月で精神的に不調に。直後に現在飼う十五歳の姉妹猫と出会い、癒やされながら父・健司さん(70)が経営する第一住宅の仕事を手伝うようになった。だが、当時は「全く継ぐ気はなかった」。次第にペットを預かる「ペットシッター」の仕事に興味を持ち、会社を離れて民間資格を取得。二〇一三年に「キャットシッター」として個人開業した。

猫のぬいぐるみを手に「猫住宅」の魅力を語る鈴木さん=蕨市で

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 一方で、後継者のいない第一住宅は徐々に事業を縮小。会社は畳む方向だったが、二年前に鈴木さんが離婚したのを機に健司さんから社長就任を打診された。悩みに悩んだ末、「父が四十三年築いてきた会社を守りたかった」と決心。それまでは営業事務の経験しかなかったが、短期間で健司さんの下で会社経営を学び、健司さんが七十歳を迎えた今年三月に社長に就任した。

 社長と社員六人の小さな会社だが、女性目線で不動産に新たな価値を提供したい−。そこで思い付いたのが「猫と不動産をつなげる」ことだった。建て売りの猫住宅は自身のアイデアに加え、猫の専門家が監修。さらにペットが飼える賃貸物件が少ないことに着目し、築三十年の賃貸マンションを猫と暮らせる部屋にリフォームして空き部屋を埋める実績を早くも残した。

 社長業は今も「葛藤の毎日」だ。それでも、猫と幸せに暮らせる後押しができることにやりがいを感じる。キャットシッターの仕事も休日を利用して継続中。住宅購入者には、自らキャットシッターとして訪問することも考えている。

 「住まいも猫のことも長く見ていきたい」と張り切る鈴木さん。少子高齢化で住宅購入者の減少が予想される厳しい業界で、斬新な発想で生き残ろうと新米女性社長の奮闘は続く。 (藤原哲也)

<すずき・ちえ> 川口市出身。9歳からフルートを習い、東邦音楽大を卒業。個人事業のキャットシッターなどを経て、3月に父・健司さん(70)が設立した不動産会社「第一住宅」の社長に就任する。「猫住宅」は物件販売のほか、猫仕様へのリフォームも手掛ける。問い合わせは、同社=電048(447)6900=へ。

 

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