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【埼玉】

<ひと物語>働く女性つながる場 1級建築士・小嶋直さん デザイナー・松村美乃里さん

「つなぐばを女性たちが一歩踏み出せる場所にしたい」と話す小嶋さん(右)と松村さん=いずれも草加市で

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 どこにでもある住宅街にたたずむ、どこにでもある二階建てのアパート。でも、窓から中をのぞくと何やらにぎわしい。古びた水道の蛇口で装飾されたおしゃれなドアを開けると、女性や子どもたちのにこやかな声が聞こえてきた。一級建築士小嶋直さん(39)と、デザイナー松村美乃里さん(40)が中心になり、リノベーションした。

 元々は築三十年の空き物件。カフェや厨房(ちゅうぼう)、ショップやキッズスペースなどを備えた落ち着いた空間に生まれ変わり、昨年六月、草加市八幡町に「シェアアトリエ つなぐば」としてオープンした。

 遊休不動産の利活用を狙い、草加市が二〇一六年に開いた「リノベーションスクール」への参加が、二人を引き合わせた。

 スクールでは、受講生がチームを組み、実際の空き物件の活用案を三日間で考える。結婚を機に会社を辞め、現在四歳の娘を育てる松村さんが提案したのが「子連れでも働ける場所」だった。小嶋さんをまとめ役に事業化への流れが固まり、運営会社の「つなぐば家守(やもり)舎」を立ち上げた。

 オープンまでには曲折もあった。当初、想定していた東武線草加駅近くの物件が契約前日、火災で燃えてしまった。別の物件探しに難航していた一七年秋、市の仲介で見つけたのが、今のアパートだった。

 コンセプトは、名前の通り「つながる」。解体や左官、断熱材を設置する作業をワークショップとして企画し、大人や子どもが楽しみながら参加した。工事の段階から、多くの人がつながる仕掛けだ。

 現在の入居者は主に女性で、六十組ほど。オフィスとして利用したり、店を開いたり、日替わりでランチを提供したり。お菓子の店とドライフラワーの店がコラボしたギフトセットを販売するなど、ここでの出会いが新たな仕事にもつながっている。

 二階には今年六月に美容室が入り、来年四月には木製おもちゃの遊び場もできる。松村さんは「つなぐばに来れば、自分にも何かできるかもしれない。そう思った母親たちが希望を持ち、一歩踏み出してくれれば」と期待する。

 小嶋さんも「女性や子どもだけでなく、性別や年代を超えて地域の交流が生まれる場所にしていきたい」と思い描く。どこにでもある建物に、ここにしかない価値を吹き込む−。そんな再生の試みは、これからも続いていく。 (近藤統義)

リノベーションで生まれ変わった「シェアアトリエつなぐば」

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<こじま・なお> 東京都練馬区生まれ。つなぐば家守舎の代表取締役。2012年から川口市内に建築事務所を構え、来年、つなぐばに移転する。同市在住。

<まつむら・みのり> 静岡市生まれ。デザイン会社で空間デザイナーとして働き、2008年に退職。つなぐば家守舎の取締役で、草加市在住。

 

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