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【埼玉】

<子どものあした>小中生、にっこり無料塾 地域住民と埼大生が支援 「ひこざ」開設5年目

埼玉大の学生と塾生が一対一で向き合って勉強する「無料塾ひこざ」=いずれもさいたま市で

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 経済的な問題などを抱える子どもたちに学びの場を提供しようと、地域住民が自主的に立ち上げた「無料塾ひこざ」(さいたま市桜区下大久保)が、開設5年目を迎えた。元特定郵便局の建物を活用し、近くにキャンパスがある埼玉大の学生が全面的に指導を担う。塾生の小中学生らは、勉強以外に学生たちとのおしゃべりや遊びも満喫。普通の塾とは違う自由な雰囲気の中で、のびのびと育っている。 (藤原哲也)

 9月中旬の火曜日。午後4時を過ぎると、ぽつぽつと子どもが訪ねてきた。指導は担任制で一対一が原則。早速、学生と授業室で算数ドリルなどの宿題に取り組む子もいれば、控室で学生とおしゃべりしながらゲーム機に熱中する子も。昨年から通う小学5年の男子児童は「(担任学生と)一緒に遊んで勉強もして楽しい!」と笑顔を浮かべた。

 午後6時を過ぎると中学生の多くが来訪。受験を控えた3年生もいて、問題集などの疑問点を聞く塾生らの目は真剣だ。学生の指導も次第に熱を帯び、15人ほどしか座れない授業室は熱気に包まれた。

 ひこざは2015年2月の開設。代表理事の角田(かくた)真喜子さん(85)が子どもの貧困問題に心を痛め、開設に向けて動き始めると、それを知った地域住民や埼玉大の関係者が協力して実現した。角田さん自身も小学生時代に父を亡くして経済的に苦労した経験があり、「私の気持ちが形になったのは皆さんの力のおかげ」と周囲に感謝する。

 開塾日は毎週火・金曜の午後4〜8時。現在は小学4年〜中学3年の計32人が通う。入塾希望は常に多く、今は新規受け入れを停止中だ。大人のボランティアスタッフ約15人と、ひこざのために結成された埼玉大の学生サークル「ひこざらす。」のメンバー約30人が運営を支える。

 特にひこざでは学生の力が大きい。終了後には毎晩ミーティングを開いて子どもたちの様子などを情報交換するほか、保護者面談やイベントも企画して積極的に交流を図っている。塾生の中には不登校などの問題を抱える子もいるため、課題を共有しながら一人一人の状況に合った居場所作りにも一役買っている。

 「ひこざらす。」副会長で、教養学部3年の海老原奈央さん(21)は「いろんな子どもを見てきて、どんな勉強法が合うか常に考えている」と打ち明ける。現在は4人の担任を務めるが、子どもとの接し方にも気を配るという。将来は教員志望のため「楽しいことも多く、いい経験になっている」と前向きに話す。

 ひこざは8月、これまでの歩みを振り返った本を出版した。生活保護の受給世帯などを対象にした県の学習支援事業などと違い、地域の人々が一から立ち上げて運営する大変さを紹介する一方、その魅力も余すことなく伝える内容だ。

 ひこざの副代表理事で、事務局も務める雛元聖子(ひなもときよこ)さん(71)は「ひこざは学習支援を軸にはしているが、子どもの受け皿はいろんな形があっていい。この本を通じて、一人一人の子どもに寄り添った地域型の無料塾が各地でもっと広まってほしい」と期待を語る。

 出版本「子どもが元気になる無料塾−地域型無料塾『ひこざ』の魔法力」は、四六判160ページ、2000部発行、税抜き1600円で販売中。問い合わせは、さわらび舎=電050(3588)6458=へ。

出版本を紹介する角田さん(中)と海老原さん(右)ら

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