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【埼玉】

<線路は続くよ 西武秩父線開通50周年> (中)廃線の危機

西武側に署名を提出する秩父地域の市町長ら=2013年4月10日、所沢市で

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 二〇一三年三月。米投資会社「サーベラス」は、西武鉄道を有する西武ホールディングス(HD)に敵対的な株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた。サーベラス側の取締役の新任に加え、プロ野球球団・埼玉西武ライオンズの売却、西武秩父線を含む五つの「不採算路線」の廃止を求めた。

 サーベラスが出資したのは元来、上場廃止に陥った西武側を支援しようとしたのが目的とされる。しかし、西武HD広報部は「再上場までのプロセスで見解の相違が生じ、中長期的な視点を欠いたと思われるような提案がなされるようになった」と振り返る。

 西武秩父線は、一九九九年に豪雨による土砂崩れで約一カ月の運休を強いられたことはあったが、「存続が危うくなったことはなかった」(西武HD広報部)。突然のTOBは、ある行政担当者にとって「公共性が高い鉄道会社に、企業再生や不良債権処理など資本の論理を持ち込んだ」と映った。

 沿線の秩父地域の住民や関係団体は、この危機に敏感に反応した。県や秩父、横瀬、皆野、長瀞、小鹿野の一市四町は路線存続を求める要望書を西武側に提出。署名活動には沿線各地で計約五十万人が応じた。このうち一市四町の署名は八万二千五百人分で、人口の八割に上った。

 地元では株主を増やそうとの動きも。秩父商工会議所などは二〇一三年四月、「西武鉄道を応援する会」を組織し、毎月定額の株を積み立て方式で購入するよう市民に呼び掛けた。同商議所の島田憲一副会頭(68)は「サーベラスと比べれば微々たる額。だが、秩父の小口の株主が大きく増えたのではないか」とみる。

 その後、サーベラスに対する金融機関や取引先などの警戒感が高まり、敵対的TOBは失敗。両社は和解し、西武は一四年四月に再上場を果たすことになった。サーベラスは一七年八月、全株を売却し撤退した。

 西武HD広報部は「サーベラスの長年の支援に感謝している」としながらも「西武秩父線をはじめ、皆さまにとってどれだけ鉄道路線が大切かを感じた」。西武は一三年以降、秩父観光をメインにしたテレビCMの展開や、レストラン列車「52席の至福」の運行、さらに「西武秩父駅前温泉 祭の湯」の開業など「秩父シフト」を加速させた。

 横瀬町の富田能成町長は「TOBを機に西武は、秩父を一大観光地にしようと投資を増やしてくれた。まさにけがの功名だった」と危機を振り返った。

 

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