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【埼玉】

<この人に聞きたいQ&A>子どもの命 バトンをつなぐ 県里親会・石井敦理事長

「地域みんなで育む環境を広げたい」と話す石井さん=さいたま市で

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 虐待などの理由で家庭にいられなくなった子どもを養育する里親制度。県内では里親登録者数が年々増える一方で、子どもの委託率は高くはない。県里親会の石井敦理事長(61)は、傷ついた子どもを養育する難しさを理解し、里親を支える体制づくりが急務だと指摘する。 (浅野有紀)

 −里親になったきっかけは。

 妻に求婚した時の条件が「将来、里親になりたい」だった。当時は里親という言葉も知らなかった。実子が産まれた後に余裕があればとイメージしていたので、不妊治療でも子どもを授からず、里親になろうと決めた時はやっぱり不安だった。

 三十八歳の時に初めて、一歳半の長男を受け入れた。続いて実子を授かった後も、三歳、六歳の男の子を迎えた。長男が家に来る前は、写真を家の壁に張り、妻と「本当にこの子にとって最善の選択なのか」と話し合った。会ってみると、人懐っこくてすぐに抱っこさせてくれた。しかし、抱っこしていないと一日中泣きやまなかったり、壁に頭をぶつけてみたり。妻は半年間、抱っこしたままご飯を食べていた。

 −養育は難しくなかったか。

 近所に里親登録したことを伝えていたので、子ども好きなお婆ちゃんが「みんなで育てよう」と、自分の孫と一緒によく公園に連れて行ってくれた。妻は息抜きできたと思う。先輩里親にアドバイスをもらうことも多く、地域で子どもに声を掛けてくれる環境だった。自分のことを大切にしてくれる人がいると感じることで「生まれてきて良かった」と思ってもらいたかった。長男が大学四年生の時、厚生労働省の委員会で「失いそうな命を実親から養親につなぐことができれば、実親が育てられなくても罪はない」と話してくれた時は、うれしかった。

 −子どもの委託率が上がらない理由は。

 認知度が上がってきたのか、里親登録者数は年々増えている。子どもを授からず、里親になりたいという若いカップルは多い。実子の子育てを一段落し、社会に貢献したいと言ってくれる年配夫婦もいる。

 ただ、実際に子どもを委託できるかどうかは別。傷ついた子どもの養育は難しく、里親がギブアップしてしまうこともある。里親支援事業の柱として、委託前の里親がベテラン里親宅で実習したり、養育が始まる前後に先輩里親が訪問支援するなど、里親同士のつながりを大切にしたい。

 また、里親委託を決定する児童相談所があまりに多忙だ。これだけ虐待の通告件数が年々増えていて対応に追われると、ただでさえマッチングに時間のかかる里親委託が十分に推進できない現状がある。

 −思い描く社会的養護とは。

 一歳半まで長男を養育してくれた乳児院の職員が退職する時、一緒にあいさつに行った。施設と里親は、子どもの命というバトンをつなぐチーム。愛にあふれる多くの大人たちとの関わりは、社会に巣立つ子どもたちの自己肯定感を育む。施設との連携も深めていきたい。

<いしい・あつし> 大阪市生まれ、蕨市在住。百貨店勤務。社会人の長男、大学3年、高校2年、中学1年の男子と暮らす。これまでに、短期間の養育や緊急を要する一時保護でも8人を受け入れた。県によると、県内で、実親と暮らせない子どもは1500人ほど。2017年度の県内の里親登録数は538世帯で全国2位だが、委託率は18.4%で同24位にとどまる。

 

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