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【埼玉】

場所、費用…実現にハードル 川越の特養と障害者施設 浸水で移転模索

職員やボランティアらの努力できれいになった床。それでも、「あの恐怖を入所者に再び体験させてはいけない」と移転を検討している渡辺さん=今月7日

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 被害が大きかった川越市では、市内を流れる越辺(おっぺ)川の堤防決壊で浸水した特別養護老人ホーム(特養)と、障害者の入所・自立支援施設がいずれも復旧を急ぐ一方、安全な場所への施設移転を模索している。しかし、場所の確保や費用など実現へのハードルは高いのが実情。行政にはバリアフリーなど高齢者や障害者に配慮した福祉仮設住宅の建設を求めているが、先行きは不透明だ。

 川越市下小坂の特養「川越キングス・ガーデン」では十月十三日、利用者百人と職員二十四人がボートで救助された。三棟の施設のうち平屋のA棟、B棟は床上約一・五メートルまで水没。寝たきりや足が不自由な利用者が多く、浸水が深くなる前に、二階建てのC棟二階にベッドごと運ぶなどし、犠牲者は出さずに済んだ。

 しかし、水が引いた後の施設は、床が一面の泥に覆われ、居室のたんすや事務室の大型冷蔵庫が倒れるなどの惨状だった。渡辺圭司施設長(58)は「水に漬かった備品は全て廃棄するしかなかった。二月に一千万円かけて改修したトイレも使えなくなった」と嘆く。

 一帯は二十年前も水害に遭っており、施設の床上浸水被害は今回で二度目。運営する社会福祉法人は「現状の形での復旧では社会的責任を果たせない」として、移転を検討している。渡辺さんは「移転には時間と費用がかかる。その間に過ごす福祉仮設住宅の建設を、市を通じて県に要望している」と話す。

 発達障害者の入所支援施設「初雁(はつかり)の家」や二つの就労支援施設、グループホーム五棟など、全施設が浸水した社会福祉法人「けやきの郷(さと)」も事情は同じだ。

 内山智裕総務課長(47)は「二十年前の水害を教訓に、かさ上げして建てたグループホームも浸水被害を受けた。今回のような台風が来ると、決して安全とは言えない」と話す。

 初雁の家は、重い知的障害と自閉症の子どもを持つ親たちが、義務教育後に行き場のない子どもたちのために一九八五年に開設。内山さんは「県内初の成人の発達障害者のための専門施設としての強い自負がある」とする一方、「入所施設は水が上がらない場所に移転・新築すべきだと考えている」という。

 キングス・ガーデンと同様に川越市を通じて福祉仮設住宅を要望しており、「今は施設の移転と建物の復旧という二つの枠で動くしかない。復旧には九カ月、概算九億円の費用がかかり、資金も足りなくなるだろう」と明かす。

 入所利用者のうち約十五人は市総合福祉センター体育館で避難生活を送り、約五十人は自宅に避難している。「そもそも、両親の高齢化や重い障害で自宅での生活が難しい人たちが利用しているので、自宅避難も限界を迎えつつある」と窮状を訴える。

 災害救助法に基づく応急仮設住宅は県住宅課が受け持つ。担当者は「特養利用者らが入居する仮設住宅となると、必要な設備の設置がどこまで可能なのか、(費用の補助を決める)内閣府と協議しなければならない」と言う。内閣府の災害救助事務取扱(とりあつかい)要領では、福祉仮設住宅について、在宅介護で受けられる訪問介護サービスを利用しやすい設備にできるとしているが、在宅介護が難しい特養利用者を対象とした基準などは示していないためだ。

 県の担当者は「施設面で在宅介護とは違ってくる。福祉部局や川越市とも連携しながら検討しないといけない」と説明している。 (中里宏)

水が引いた後の川越キングス・ガーデンA棟。床が泥の海と化していた=10月15日、いずれも川越市で

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