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【埼玉】

<ひと物語>多彩に活動 伝統守る 花織人・銘仙語り部 木村和恵さん

華道家、秩父銘仙の収集家、まちづくりの活動家と多彩な顔を持つ木村さん=いずれも秩父市で

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 十一月中旬、古民家を利用した秩父市番場町のNPO法人「ちちぶまちづくり工房」の一室で、秩父夜祭(今月二、三日)の際に開かれる着物と反物の即売会「絹市」についてのミーティングが開かれた。

 メンバーは官民の十一人。議題は当日の交通規制や夜間の照明などだ。地元の絹織物「秩父銘仙」を羽織った木村和恵さん(73)が「明かりは足元が重要。ろうそくはだめだけど、揺らめいて見えるようにしたいよね」と呼び掛けると、多くのメンバーがうなずいた。

 華道家であり、秩父銘仙の収集家であり、まちづくりの活動家でもあり−。木村さんは、そんな自身を「花織人(はなおりびと)・銘仙語り部」と称している。

 人生の転機は一九八二年。人の紹介で、華道家川瀬敏郎さんの作品写真集「風姿花伝−日本のいけばな」(文化出版局刊)を手に取ったこと。一つ一つの花が既存の枠にとらわれることなく、自由に生けられていた。衝撃だった。

 当時、華道小原流の教授として、多くの弟子を抱え、成功を収めていた木村さん。一方で「花は人の基準で生けなければならないのか」との疑問も抱いていた。教えを請おうと、翌八三年に川瀬さんの教室を訪ねた。

 流派を離れた木村さんから、多くの弟子がたもとを分かった。だが、「秩父の風土に根差した作品をつくりたい」との思いは募る一方。地域の歴史や文化などを知ろうと、さまざまな会合やイベントに参加した。

 人との出会いが、果敢な活動の原動力となった。秩父鉄道三峰口駅(秩父市)のホームを秋の野の花で飾ったり、旧宿場町の軒先を草花や絵画で彩る「縁側展」に関わったり。秩父の伝統の灯を消さないようにと、当時は多くの人の関心の外にあった秩父銘仙を収集したりもした。

 特に力を入れたのは、旧県繊維工業試験場秩父支場本館の保存活動だ。秩父の養蚕を支えた昭和初期建造の試験場は、役割を終えたとして閉鎖、解体される危機にあった。

 木村さんら市民有志は九七年、秩父銘仙のこれからを考える企画展を開催し、市民の間に建物存続の機運を呼び起こした。試験場は二〇〇二年、秩父銘仙を展示する「ちちぶ銘仙館」に生まれ変わり、今なお多くの愛好者らでにぎわっている。

 「若い頃は見えもあったが、今はありのままで行動する。全ては人と人との絆。いつも誰かが助けてくれるの」。木村さんはほほ笑む。 (出来田敬司)

<きむら・かずえ> 秩父市生まれ。市立秩父第二中を経て、県立秩父高卒。上京後、会社勤めをしながら華道に親しむ。1970年、秩父に帰郷。日本電信電話公社(現NTT)や経理事務所などに勤務しながら、小原流の教授として華道の普及に努める。87年に独立し、現在は「花織人・銘仙語り部」として活躍する。

木村さんが生けたアワコガネギク。野趣あふれる庭の草花が背景だ

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