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【埼玉】

働く喜び 点字名刺に 越谷の作業所、視覚障害者ら製作

機械で名刺に点字を打ち込む小林さん(右)と大政さん

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 お仕事の機会をいただければ−。越谷市の福祉作業所から、本紙に1通の封書が届いた。文章に添え、点字が刻まれている。視覚に障害がある人たちが注文を受け、名刺に点字を入れる「点字名刺」を作っているという。どんな現場なのか、作業所を訪ねてみた。 (近藤統義)

 発注者から預かった名刺を専用の機械にセットする。レバーを引くと、点字が打ち込まれ、あっという間に点字名刺が完成した。これを一枚ずつ繰り返す。「楽しくてしょうがないですよ」。封書をくれた全盲の小林初子さん(66)=越谷市=が笑った。

 同市大沢の就労継続支援B型事業所「ココロスキップ」。二〇〇七年から点字名刺を作っていて、十人ほどの視覚障害者が点字の打ち込みを担当している。職員や別の障害がある利用者たちが隣に座り、不良品がないかをチェックする。

 事業を立ち上げたのは代表の大政(おおまさ)マミさん(38)。発達障害の傾向がある兄が、職場で働きづらさを抱えていると知ったのがきっかけだった。「やりがいや居心地の良さを感じられる職場を実現し、視覚障害者が働くからこそ価値が生まれる商品やサービスができないか」と考えた。

 小林さんは二十年前に視力を失ってから、働きたくても働ける環境がなかなか見つからなかったという。この作業所に週一回通い始め、「できないことに挑戦し、できることが一つずつ増えている。自分の仕事で人の役に立てるのがうれしい」と話す。

 注文は百枚一セット(千百円)から。事業の開始当初は依頼がない日が続いたが、会員制交流サイト(SNS)で発信した効果もあり、今では年間六十万枚を手掛ける。チラシや封筒への刻印も始め、年末は「謹賀新年」などと点字を入れる年賀状用のシールの発注も多い。

 「営業先で会話が広がった」「名前を読み取ってくれて感動した」。点字名刺を使う人からは、こんな声が届いている。「一枚の名刺から障害者が働くことへの理解が広がり、共に生きる社会への一歩になれば」と大政さんは期待している。

視覚障害者が点字を打ち込んだ名刺や年賀状シール=いずれも越谷市で

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