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【埼玉】

ニセ電話詐欺 受け子、出し子…なぜ増える少年犯罪 新潟少年学院で更生目指す・埼玉出身の元少年を取材

「被害者の気持ちを考えていなかった」と反省する元少年=新潟県長岡市の新潟少年学院で

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 ニセ電話詐欺で、現金やカードを被害者から直接だまし取る「受け子」や、そのカードで金を引き出す「出し子」として摘発される少年が増えている。少年たちはなぜ犯罪に手を染めるのか−。詐欺に関与した結果、新潟少年学院(新潟県長岡市)で更生を目指す埼玉県出身の元少年(20)らの取材を通し、背景を探った。 (森雅貴)

 「お金を楽に稼げた。指示されたことをやるだけでよかったから」。元少年は悔恨の表情で振り返った。

 高校三年時、アルバイトをしていたが、「もっとお金が欲しい」と考えるようになり、インターネットで「高額・即日・簡単」などと検索し、求人の掲示板を発見。メールを送ると、指示役の男から連絡があり、仕事内容はニセ電話詐欺の受け子だった。リスクも感じたが、だまし取った金の15%がもらえると説明され「受け子は捕まらないよ」と言われ、うのみにした。

 最初の指示は、一人で東京都内の高齢女性宅に行くこと。スーツ姿で、伝えられた住所へ。銀行協会職員を名乗ってキャッシュカードを受け取り、すぐに出て行く。一瞬だった。近くで待機していた男にカードを渡し、任務終了。「捕まらなくてよかった」と胸をなで下ろした。

 「何回もやるうちに罪悪感が薄れていった」。二カ月間で受け子三件と出し子十件を行い、約百二十万円分の詐欺に加担し、約二十万円を得た。ただ、徐々に捕まる恐怖に耐えられなくなり、やめた。

 高校卒業後は専門学校に進学。新たな生活を歩み始めていたある日、警察が自宅を訪れた。「ついに来たか」と震え上がった一方、「いつ捕まるかの不安から解放された面もあった」。詐欺容疑で逮捕され、少年院送致された。防犯カメラに姿が写っていたという。

 少年院では更生プログラムに参加し、なぜ罪を犯したか考える日々が続く。「犯罪という点では、殺人や強盗と同じなのに、被害者の苦しむ顔が見えず、実感が湧かなかった。高齢者の老後の大切なお金を奪ってしまい、申し訳ない」と後悔を募らせる。

 昨年十二月で二十歳になり、本来なら今年一月に成人式を迎えたはずだった。「捕まった当初は成人式に出たい気持ちもあった。だけど、今はそんな場合ではない。被害者にいつ見られてもいいような真面目な大人になりたい」と更生を誓っている。

◆記事読ませ犯罪の重み痛感 防止向けさまざまな取り組み

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 新潟少年学院では、更生プログラムとして、入院者にニセ電話詐欺に加担した当時の気持ちや交友関係を振り返らせていて、集団で語り合うこともある。事件を報じた新聞記事を読ませることで被害者の精神的ショックを感じさせるなど、被害者感情にも向き合わせている。

 ニセ電話詐欺に関する再非行防止を指導する沢田尚宏法務教官は「出院後、他の犯罪もさせないよう、自分がどれだけの被害を出したのか実感させることが大切だ」と力を込める。

 少年が加担するきっかけは「地元の不良グループや会員制交流サイト(SNS)で誘われ、手を染めることが多い」とし、「家族関係でうまくいかない子がお金を奪い、グループから評価されることで達成感を得ている」と指摘。最初に身分証をグループに提出させられ、返してもらえないため、なかなかやめられないケースもあると説明する。

 取り締まる警察側も詐欺の誘いが少年の身近にあることに警戒を強めている。

 愛知県警は、詐欺グループが受け子や出し子をツイッターで勧誘していることに注目。昨年八月から全国に先駆け、募集とみられる投稿に不適切な内容だと返信し、警告する取り組みを続ける。ツイートには「受け出し」「運び屋」といった隠語が並び、簡単に金が稼げるかのように誘っているという。募集する側や応募しようとする若者らに監視の目を意識させる狙いがあり「募集ツイートはなかなか減らないが、継続すれば効果は出る」とみている。

 埼玉県警は数年前から、中学校での講演で受け子や出し子の誘いを断ることを呼び掛けている。「カードを受け取るだけでも詐欺になると認識してもらい、安易な気持ちで手を出さないように」と注意を促す。

 警察庁は「詐欺グループの摘発に力を注いでいるが、こうしたグループではお互いの名前も知らないことが多く、主犯格までたどり着くことは難しい」とし、「各都道府県警の取り組みを見ながら、被害を防いでいきたい」としている。

 立正大文学部の小宮信夫教授(犯罪学)は「少年は、詐欺は捕まるリスクが低く、多くの金がすぐにもらえると考えている。英国などでは犯罪で摘発された後の刑事手続きや社会の反応を中学校で学ぶ。損得勘定で動く子どもには、摘発されるとどうなるかを小さい頃から教えることが有効だ」と話している。

◆摘発2911人中 2割強が少年 19年、全国

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 ニセ電話詐欺を巡っては、2000年代初めから子どもや孫らになりすます「オレオレ詐欺」の手法が目立つようになった。最近はインターネットのアダルトサイトの利用料名目などの架空請求や自治体職員らを名乗る還付金名目、封筒に入れさせたキャッシュカードをすり替えてだまし取るなど、主な手口が変わってきた。

 警察庁によると、19年に全国で認知したニセ電話詐欺は約1万6800件で、被害総額は約301億円。1日当たりで8200万円超の被害が出ていたことになる。被害者は65歳以上の高齢者が多く、全体の約83%を占めた。20歳未満の少年の摘発が多いのも最近の特徴だ。19年に摘発された2911人中、2割を超える633人が少年で、うち約75%が現金やカードを被害者から受け取る「受け子」だった。

 

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