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【埼玉】

<Newsスポット>伊奈町4歳児死亡で両親逮捕 指導では寄り添えぬ

心ちゃんの両親に任意同行を求める県警の捜査員=6日、伊奈町で

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 伊奈町で2017年12月、当時4歳の岩井心(こころ)ちゃんが死亡し、母親の真純(28)、父親の悠樹(30)の両容疑者が県警に保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された事件。町は体のあざなど虐待の兆候を把握していながら、母親への指導後はあざがなかったため、支援を打ち切っていた。事件の背景には育児ストレスがあったとみられ、専門家は「指導では、保護者のSOSに寄り添えない」と指摘している。 (浅野有紀、森雅貴、前田朋子)

 捜査関係者によると、一七年十二月二十一日夕、心ちゃんは入浴後に具合が悪くなり、母親が連れて行った病院で死亡が確認された。全身に数十カ所のあざがあり、脚の付け根の筋肉は断裂していた。両親は、逮捕前の聴取時から暴行を認め「しつけのため」と説明していた。母親は食事を与えていたが「死ぬ数日前は、一口ほどしか食べなくなった」という。

 両親の携帯電話からは、心ちゃんが足をひきずって歩く様子を撮影した動画が見つかった。県警は、お漏らしした心ちゃんのお尻をふく際に無理やり脚を広げたため、脚の筋肉が断裂したとみている。

◆いら立ち募らせ

 一家は一六年二月、心ちゃんが二歳半のころに県内の別の自治体から伊奈町に転居。心ちゃんと両親、兄との四人暮らしで父親は自営の空調設備業が忙しく、家事と育児はパートの母親が中心だった。トイレトレーニングがうまくいかず、お漏らしすることも多かったという心ちゃん。県警は、母親が次第にいら立ちを募らせ、父親も「母親を怒らせるな」と暴行に加わるようになったとみている。

 町は、心ちゃんをたたく虐待行為を事件の一年以上前から把握していた。一六年七月、「雨の中、女の子が一人で立っている」と近隣住民が町人権推進課に通報。同課と子育て支援課の職員が向かうと、心ちゃんはTシャツ一枚の半裸姿で、腕やお尻にあざがあった。母親は「お尻をついて階段を下りるから」と説明した。「トイレトレーニングに失敗しても、謝らない」と嘆く母親に対し、職員は「外に出すのは良くないよ」と伝え、相談があれば役場に来るよう告げた。

 翌日、児童手当の手続きに役場を訪れた母親は「兄と比べて物覚えが悪い」「たたくこともある」と打ち明けた。職員が再度、たたくことは虐待に当たると説明すると、素直に聞き入れる様子だったという。

◆新しいあざなく

 職員が八月に再び自宅を訪問した際、母親は「子ども二人はストレスだが、(兄が)幼稚園に行けば楽になる」と話した。新しいあざは確認されず、心ちゃんが母親にもたれかかる様子を見て、職員は「一時的に暴行しただけ」と判断し、児童相談所や県警に通報せず、子育て支援センターを紹介して支援を終えた。

 町は一八年度から、虐待が疑われる通報を受けた場合、児相や警察も入る要保護児童対策地域協議会に全件情報共有する方針に変えたが、事件前はこの仕組みではなかった。町の担当者は「当時、できることはした」と説明。今後は専門家を入れた会議で、保護者対応を検証する。

 千葉県野田市の虐待事件などの検証委員を務める日本大危機管理学部の鈴木秀洋准教授は「児相に通報しなかったことが一番の論点ではない」とし、「母親と接した複数の職員が縦割り業務に合わせて母親の行動を促しており、『困っている』というSOSに寄り添えていないことが問題だ」と指摘。母親の立場に立ち「トイレトレーニングなんてしなくていいよ」「保育園に預けてストレス発散してよ」などと、子育てに伴走できるよう「職員同士の連携を見直すべきだ」と話している。

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