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【スポーツ】

稀勢の里、たたき上げ17年 信念は「絶対逃げない」

 「一生懸命やってきました」。引退会見の中盤、けがとの闘いを問われた稀勢の里は、声を震わせ、顔を赤らめ、目からこぼれ落ちる粒を大きな手で何度もぬぐった。感情を押し殺す土俵上での姿と違い、涙とともに相撲愛があふれ出た三十分間だった。

 まばゆいフラッシュの中、直立してあいさつした冒頭。「私、稀勢の里は今場所を持ちまして引退し、年寄荒磯として後進の指導に当たりたいと思います。大変お世話になりました」と頭を下げた。

 引退の心境を表した「人生に一片の悔いもない」という言葉は、化粧まわしに描いた人気漫画「北斗の拳」の登場人物「ラオウ」の名ぜりふだ。ファンに見せられなかった復活劇。それでも「絶対に逃げない」という信念で、“徳俵”まであらがった。

 相撲人生の思い出は「稽古場」。最高の一番は二〇一七年初場所で初優勝を決め、横綱昇進を決定的にした十四日目ではなく、白鵬に勝った千秋楽。「大関昇進を決めた場所では、千秋楽に負けたので」。中卒のたたき上げ。一つの稽古、一つの取組も気を抜かず、十七年間をささげた。

 「いろいろな人に支えられ、応援してもらい、先代(師匠)らの顔を思い出すと、どうしても」と涙の理由を語った第七十二代横綱。昇進後はけがや重圧に苦しめられたが、「あの声援の中で相撲が取れたのは、力士として幸せだった」とかみしめた。

 会見を終えると、規制線や金網の向こうで待っていたファンの声援を背に車で去り、土俵に別れを告げた。 (原田遼)

 

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