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【スポーツ】

玉鷲「人を楽しませたい」 優勝一夜明け会見

初優勝から一夜明け、片男波親方(右)と握手を交わす玉鷲=東京都墨田区の片男波部屋で

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 初場所で初優勝を果たした西関脇の玉鷲が千秋楽から一夜明けた28日、東京都墨田区の片男波部屋で会見し、両国国技館を起点とした優勝パレードを「あの景色を見られる人は限りなく少ない。本当に良かった」と振り返った。

 6日目から10連勝を飾り13勝2敗。春場所以降の成績次第では大関昇進の可能性が膨らむ。今後に向け「人を楽しませる、喜ばせる相撲を取りたい。一番一番楽しくやれば結果は出る」と語った。

 34歳2カ月での初優勝は年6場所制となった1958年以降で2番目の年長。角界に押し寄せている世代交代の波にあらがうような躍進に「自分も若くならなくちゃ、同じくらいやらなくちゃ。40歳を超えても現役でやりたい」と意気揚々と話した。

 師匠の片男波親方(元関脇玉春日)は「長く現役を送ってほしい。花火みたいにどーんと上がって散るのでは寂しいですから」とさらなる飛躍に期待した。

◆「運命って面白い」 姉頼り来日 鶴竜と出会い

 誰よりも玉鷲自身が、34歳で賜杯を抱く姿を想像していなかっただろう。日本に留学していた姉を頼り、2003年に初めて来日した時は「テレビでは力士の体がぶよぶよに見える。なめていた」。憧ればかりではなかった角界に飛び込み、番付を駆け上がっていく過程には「運命って面白いですね」と懐かしむ偶然の重なりがあった。

 04年初場所で初土俵を踏む少し前。大学の夏休みに訪れた日本で、まだ関取ではなかった横綱鶴竜と運命的な出会いを果たした。橋渡しを受け、先代師匠の楯山親方(元関脇玉ノ富士)との会食にたどりつく。これが食の太さをみる「テスト」。中華料理4人前を平らげた食べっぷりを買われて入門が決まるが、実は2度トイレで胃袋の中身を戻していたという。

 次々と出てくる料理を口に運び続けたのは「もらったものは食べなきゃ失礼」という気遣いの裏返し。「人と会うのが好き」という朗らかな一面が、モンゴルでホテルマンを目指していた青年を土俵へ向かわせた。

 町に出れば、擦れ違う人が持つ買い物袋の膨らみを見て「何を買ってきたのかな」と考える。誰かの気持ちを想像するのは得意な方だが、土俵の上では勝手が違った。「相手の思惑が分からない。分かったらもっと勝てるのに」。時には自分の考えも分からなくなり、弱気な心を抽象化したイラストを描いて自身と向き合った。複雑な人の心に対するもどかしさこそが、闘いの原動力になった。

 この経緯を語ったのは、三役に定着し始めていた17年4月の春巡業だった。直前の春場所では、横綱日馬富士を破っていた。その話題になると、その日が長男の誕生日だったことを明かして目尻を下げた。直後、口が滑ったとばかりに「いい話にされるのは好きじゃない。相撲だけを見てほしい」。大きな体に秘めた優しさに、真摯(しんし)な土俵態度。初優勝を祝福する人の多さが、玉鷲の人柄を物語っている。 (浅井貴司)

 

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