東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > スポーツ > 紙面から > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【スポーツ】

<ウィメンズ・リポート 咲きつづけたい>体の変化支える医師ら 外来窓口設置 正しい理解啓発 産後 目標値設け練習方法助言

医師向けのマニュアルを制作した鯉川なつえ准教授=千葉県印西市の順天堂大さくらキャンパスで

写真

 女性特有の体の変化に伴う問題はここ数年、声を上げる女子選手が増えて少しずつ認識されつつある。それは、彼女たちのために奔走する医師や研究者の尽力のたまものでもある。最前線で支援する現状を聞いた。 (兼村優希)

 病院に「女性アスリート外来」を設置する動きが各地に広がっている。基点となったのは2014年に全国で初めて外来をつくった順天堂大付属病院。同大陸上部女子監督も務めるスポーツ健康科学部の鯉川なつえ准教授(46)は「日本産科婦人科学会なども講習会を開き、受講した各地の医師の一覧をインターネットに載せている。本人や親が調べられる環境ができたのはいいこと」と話す。

 女性は、月経が始まる10代初めごろから女性ホルモンの一種「エストロゲン」の分泌が増えて骨密度が高くなり、20歳ごろに最大値を迎える。栄養が足りずに月経不順になると、十分に骨をつくれず、疲労骨折しやすくなる。体操などの技の美しさを競う競技では「痩せた方がきれい」という先入観が生まれ、無月経に陥りやすい。持久系の陸上長距離や減量を伴う格闘技の選手にも見られる。五大栄養素を含んだバランスの良い食事が欠かせず、指導者の理解も求められる。

 鯉川准教授は「整形外科と婦人科、栄養科の3つが関わる。医師が背景を理解しないと根本的な解決につながらない」と、18年に医師向けのマニュアルを作成。前年には選手自身で体調を確認できるスクリーニングシートも作った。今年3月には、東京都が女子中高生向けにこうした問題を紹介する冊子を発行。これとは別に概要を記したチラシも配って啓発している。

 ◇ 

 産後の競技復帰を目指す女子選手にとって、予想以上の体の変化が大きな壁になる。「骨盤が開き、筋力も低下している。元に戻るのではなく、(産前とは)違う自分としてチャレンジする意識が大切」。トップ選手を中心に妊娠期と産後の支援などをしている国立スポーツ科学センター(JISS)の土肥美智子医師(53)は、そう言葉に力を込める。

 もちろん、安全な出産が最優先。妊娠期は自分がこれまで行ってきたトレーニングから体調に見合ったものを選ぶ。個人差が大きいので、トレーナーらと相談しながら、練習量を調整する。産後は、けがからの復帰と同じイメージ。筋力や体脂肪などを調べ、復帰時の目標値に向けてトレーニングを積む。定期的に医師や理学療法士らと進行具合を評価していく。

 土肥医師らによる15年度の調査では、既婚者や社会人の女子選手282人のうち、3割超の90人が出産後も現役続行を望むと回答。「ママさん選手を増やしたいわけではない。ただ、産後も続けたいと思う選手がいたときに、復帰できる選択肢をつくるのが私たちの仕事だと思う」

 大切なのは、こうしたサポートがどの地域でも受けられるようにすることだ。「トレーニングを知っていれば誰でもできる内容。地域の医師や栄養士の協力を得て、選手が産みたいところで対応できる体制を整えたい」と、競技団体などからの相談も受けている。

産後の競技復帰を目指す選手支援を進める土肥美智子医師=東京都北区の国立スポーツ科学センターで

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報