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【スポーツ】

元球児、やり投げで再「輝」 障害で転向、活躍増える

関東パラ陸上選手権男子やり投げF12を大会新記録で制した若生裕太=東京都町田市の市立陸上競技場で

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 2020年東京パラリンピックに向けて選手発掘を進めるパラ陸上で、高校野球経験者からやり投げに転向して活躍する選手が増えている。6、7日に東京・町田市立陸上競技場であった関東選手権でも大会記録を相次いで更新。目標を一度絶たれた元球児たちは「切磋琢磨(せっさたくま)して頑張る姿を見せたい」と新たな夢を追う。

 視覚障害F12の日本大4年、若生裕太(22)=関東パラ陸協=が、真っすぐに助走を始める。振り投げたやりが刺さったのは大会新記録の53メートル52。視野の中心が暗転しているため、やりの行方は見えないが、拍手と歓声で「あ、いったかな」と確信したという。競技を始めて1年。6月の日本選手権で54メートル25の日本新を出した成長株だ。

 日大鶴ケ丘高(東京)野球部で主将を務めた。異変があったのは大学2年の秋。「簡単なボールが捕れず、トスバッティングも当たらなくて、おかしいなと片目を閉じたら、右目が見えなくなっていた」。視力が急激に低下する難病「レーベル遺伝性視神経症」。半年で、両目の視野は周辺がぼんやりと見えるだけになった。

 この病気は母系遺伝。「息子に迷惑を掛けた」と肩を落とす母を笑顔にしたかった。「自分は高校野球も頑張れたし、大学生活も楽しい。母の子育ては間違っていない」。いくつか競技を体験し、昨年4月、野球で鍛えた肩の強さを生かせるやり投げに絞った。

 ただ、同じ投げる動作でも体の使い方は異なるため、若生は十種競技経験者の後輩にも教えを請う。今回の関東選手権で上肢障害F46クラスを大会新で制した高橋峻也(日本福祉大3年)のほか、F46の日本記録を持つ山崎晃裕(順天堂大職)も元球児だ。

 日本パラ陸上競技連盟の指宿立(いぶすきたつる)強化委員長(54)は「日本の選手はトラックと跳躍が約8割で、投てきは2割ほど。東京パラに向け、投てき選手の発掘が急務」と話す。投げる動作に慣れた野球経験者は貴重といい、「練習場所の確保を進め、活躍できる場があると伝えたい」と力を込める。

 若生が東京パラの出場枠が懸かる世界選手権(11月・ドバイ)に出場するには、ジャパンパラ陸上(今月20、21日・岐阜市)で派遣指定記録の57メートル02を出さなければならない。自身の日本記録から、あと3メートル弱。「何とか世界選手権に出て、東京につなげたい」と前を見据える。 (兼村優希)

 

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