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【スポーツ】

MGC男子 混戦抜け出た 中村会心、暑さを味方に

 東京五輪の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)は15日、東京・明治神宮外苑を発着点に五輪本番とほぼ同じコースで初めて行われ、30人が出場した男子は中村匠吾(富士通)が2時間11分28秒で優勝し、8秒差の2位に入った服部勇馬(トヨタ自動車)とともに初の五輪代表に決まった。

 10人で争った女子は前田穂南(天満屋)が2時間25分15秒で1位、トラックでリオデジャネイロ五輪に出場した鈴木亜由子(日本郵政グループ)が2位で代表入りした。3位は男子が日本記録保持者の大迫傑(ナイキ)、女子は小原怜(天満屋)。

 男子は前日本記録保持者の設楽悠太(ホンダ)が独走態勢を築いたが、後半失速。37キロ付近で後続の集団が追い抜くと、39キロすぎに上りで中村がペースを上げて服部、大迫との争いを制した。設楽は14位、井上大仁(MHPS)は27位だった。

 女子は前田が18キロすぎに鈴木との争いに持ち込むと、20キロ手前から差を広げて逃げ切った。(スタート時=男子=晴れ、気温26・5度、湿度63%、女子=晴れ、気温26・9度、湿度63%)

MGCで優勝した中村匠吾=東京・明治神宮外苑で

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 「もっと暑くなれ」。中村の願いがかなった。ゴールテープを切ったのは4強ではなく、暑さに強い中村だった。「自分のベストパフォーマンス。予定通りの後半勝負ができた」。この日が26歳最後の日。東京五輪代表は自らに贈る1日早い誕生日プレゼントとなった。

 スタート時の気温は26・5度。レースが進むにつれ、少しずつ上がっていく。日差しも強い。気温30度近くまで上がった39キロすぎ。大迫、服部との先頭集団から抜け出した。だが、41キロ付近で大迫に並ばれ、今度はリードを許す。抜きつ抜かれつのデッドヒート。中村にはまだ余裕があった。レース前日の試走で「間違いなくポイントになる」と考えていたラスト800メートル。これが最後の上り坂。力を振り絞り、大迫をとらえ、再び突き放した。

 5月に右の腓骨(ひこつ)、7月下旬には左膝を痛め、約2週間走れなかった。しかし、予想以上の気温が味方する。普段から暑さに動じず、汗をかかない。所属の福嶋正監督は「暑くて仕方ない日でも『エアコンを切ってください』と言ってくる」と笑う。

 この日、中村は給水で約1リットル補給した。42・195キロを走り終えると、多くの選手は発汗により、体重が5%程度減少するが、「ほとんど変わらなかった」という。

 東京五輪の本番は来年8月9日。「夏のレース、練習でも大崩れしたことがない」と自信をのぞかせる。「もっと暑くなれ」。当日がさらに暑くなれば、中村の見せ場は増えるだろう。 (森合正範)

<なかむら・しょうご> 三重・上野工高(現・伊賀白鳳高)で全国高校総体5000メートル3位。駒大時代の13年にユニバーシアードのハーフマラソンで銅メダルを獲得した。富士通に進み、18年は初マラソンのびわ湖毎日で日本人トップの7位、ベルリンは2時間8分16秒で4位となった。172センチ、55キロ。9月16日に27歳となる。三重県出身。

◆服部不屈 最後の最後、2位浮上

男子で2位でゴールする服部勇馬

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 きつい上り坂で3人が追いつ追われつのデッドヒートを演じた終盤。服部は中村のスパートについて行けず、41キロすぎには2番手の大迫からも20メートル近く離された。でも、諦めない。大迫がこちらを振り向くのが見えた。「(大迫も)結構きついんだな」。気力を振り絞り、「3番目では(東京五輪)内定にならない。必ず2位に入りたい」。気付けば大迫を追い越していた。

 苦手を自信に変えて臨んだレースだった。元々「苦手意識があった」という上り坂が、このレースの鍵を握っていた。拠点を置く愛知県田原市の蔵王山を走り、合宿先の長野県でも「40キロ走の次の日に、箱根並みの上りをやった」。練習を積み上げ、「自信を持って上り坂に入れる」と言えるまでになった。

 発汗量が多く、水分と糖質を補う2本の給水ボトルを用意し、首からワイヤで下げる独自のスタイルを確立。暑さへの順応力も示した。「東京五輪でのメダルはそう簡単ではない。これ以上の努力をし、1年後までしっかり準備したい」と、己を信じてひた走る。 (兼村優希)

<はっとり・ゆうま> 宮城・仙台育英高3年だった11年全国高校総体の5000メートルで5位。東洋大では15年から箱根駅伝「花の2区」で2年連続区間賞に輝いた。16年2月の東京でマラソンデビュー。同年春にトヨタ自動車に入社し、昨年12月の福岡国際で2時間7分27秒をマークし、日本人として14年ぶりの優勝を果たした。新潟県出身。176センチ、63キロ。25歳。

◆大迫無念 5秒差3位、冷静さ失って消耗

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 残り1キロの攻防で優勝候補が競り負けた。大迫=写真、代表撮影=は41キロ付近で一度はトップへ。なおも食らい付く中村に最後の上り坂で突き放されると、服部にも残り300メートルほどで抜かれた。2位に5秒差で五輪代表を逃し、「力負け。レースで焦ってしまった。まだ心の弱さがある」と目を伏せた。

 想定したはずだった設楽の飛び出しに持ち前の冷静さを失った。普段の大迫なら集団の中ほどで機をうかがう序盤の展開。しかし焦りから前方に位置取ってしまい、テンポを上げ下げする駆け引きに「いちいち対応してしまった」。徐々に削り取られたスタミナが勝負どころで響いた。

 これから難しい選択を迫られる。日本記録の更新が必須となるMGCファイナルで五輪切符をつかみに行くか、ライバルの日本記録はないと信じて五輪本番を見据えた強化に入るか。大迫は「コーチと相談し、またしっかりと考えていきたい」と悩ましげだった。 (松山義明)

◆設楽失速 予告の大逃げ失敗14位

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 宣言通りの「大逃げ」ならず。集団でけん制し合う中、設楽=写真=はスタートから一目散に飛び出した。ぐんぐんと後続を引き離し、中間点では2分1秒差まで広げた。事前の会見で「誰も付いてこなくなるくらいまでペースを上げる」と語った通りの展開。だが、最後までは続かなかった。

 「25キロくらいできつくなった」。残暑の日差しが照りつけ、足が重くなる。37キロ付近で追い上げてきた9人の集団にのみ込まれ、追いすがる力は残っていなかった。14位でゴールすると、「きつすぎて覚えていない」と言葉少なに振り返った。

 東京五輪を目指すには、今後の指定大会で日本記録を出さなければならない。設楽は「今は考えたくない。一回休んで、相談して決めたい」と疲れ切った表情でつぶやくのが精いっぱいだった。 (兼村優希)

◆井上低調 ギア上がらず27位

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 4強の一角として期待された井上=写真=は27位に終わった。序盤から精彩を欠き、12キロ付近で帽子を投げ捨てて気合を入れ直したが、最後までギアを上げられなかった。

 特に体調は悪くなかったといい、昨夏のアジア王者は「味わったことのない感覚。悔しいというより、すごく戸惑いが大きい」と困惑顔。「ファイナルチャレンジで日本記録を目指すしかない」と自らにハッパを掛けた。

 ▽男子成績 (1)中村匠吾(富士通)2時間11分28秒(2)服部勇馬(トヨタ自動車)2時間11分36秒(3)大迫傑(ナイキ)2時間11分41秒(4)大塚祥平(九電工)(5)橋本崚(GMO)(6)竹ノ内佳樹(NTT西日本)(7)鈴木健吾(富士通)(8)中本健太郎(安川電機)(9)藤本拓(トヨタ自動車)(10)岡本直己(中国電力)(11)上門大祐(大塚製薬)(12)山本浩之(コニカミノルタ)(13)河合代二(トーエネック)(14)設楽悠太(ホンダ)(15)堀尾謙介(トヨタ自動車)(16)山本憲二(マツダ)(17)神野大地(セルソース)(18)木滑良(MHPS)(19)谷川智浩(コニカミノルタ)(20)岩田勇治(MHPS)(21)村沢明伸(日清食品グループ)(22)福田穣(西鉄)(23)佐藤悠基(日清食品グループ)(24)藤川拓也(中国電力)(25)今井正人(トヨタ自動車九州)(26)園田隼(黒崎播磨)(27)井上大仁(MHPS) 高久龍(ヤクルト)、荻野皓平(富士通)、宮脇千博(トヨタ自動車)=以上、途中棄権

 ▽女子成績 (1)前田穂南(天満屋)2時間25分15秒(2)鈴木亜由子(日本郵政グループ)2時間29分2秒(3)小原怜(天満屋)2時間29分6秒(4)松田瑞生(ダイハツ)(5)野上恵子(十八銀行)(6)一山麻緒(ワコール)(7)福士加代子(ワコール)(8)安藤友香(ワコール)(9)岩出玲亜(アンダーアーマー) 上原美幸(第一生命グループ)=途中棄権

 

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