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【スポーツ】

<ラグビーW杯>V候補アイルランド支える 国境超えた団結の歌

スコットランド戦を前に整列するアイルランドフィフティーン=いずれも22日、横浜市の日産スタジアム

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 ラグビーのワールドカップ(W杯)で28日に静岡スタジアムで日本と戦うアイルランド代表は、アイルランド共和国と、英国の一部である北アイルランドが歴史的に合同チームを組んでいる。世界ランキング2位の優勝候補の強さは、国境を超えた団結で支えられている。(海老名徳馬)

95年の第3回大会から

 22日に横浜・日産スタジアムで行われたスコットランドとの初戦。試合前に歌われたのは共和国の国歌ではなく、合同チームのためにつくられた独自の歌だった。「ともに高々と立ち、肩と肩を組み、アイルランドの人々の叫びに応える」と歌い上げる「アイルランズ・コール」。以前は共和国の国歌を歌ったが、北アイルランド出身選手は違和感を持っていたとされ、1995年の第3回W杯を機に代表チームの歌としてつくられた。アイルランド社会に詳しい上智大の小山英之教授は「共和国の国歌は独立戦争で歌われた反英の歌。ラグビーでアイルランズ・コールを歌うのは画期的で、平和の力になればいい」と評価する。

スコットランド戦を前に歌うアイルランドフィフティーン

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「島の代表」として存続

 北アイルランドでは70〜80年代に、プロテスタントの住民とカトリックの住民の間で紛争が続いた。それでもラグビーの代表は、十九世紀から続く「アイルランド島の代表」として合同チームを存続してきた。スポーツ社会学などが専門の成城大・海老島均教授は「宗教の影響を受けにくかったから」と説明する。

 英国やアイルランドで、ラグビーは歴史的に中、上流階級のスポーツだった。海老島教授は「(ラグビーの愛好者は)エリートとしての階級が同じ。価値観も近いので対立しない」と推し量る。北アイルランドの紛争は支配者層のプロテスタントと、被支配者層のカトリックの争いという側面もある。サッカーはその影響を強く受けているといい、かつて合同だった代表チームは別々に組織している。

アイルランド−スコットランド戦の前にアイルランドの歌を歌うファン(岩本旭人撮影)

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 合同チームはファンにも受け入れられているという。東京都品川区でアイルランド料理店を営む共和国出身のアラン・フィッシャーさん(36)は「北と共和国というより、四つの地方の合同チームという意識。とてもいいシステム」と話す。一部が北アイルランドであるアルスター地方を含めた四地方は、アイルランズ・コールでも「四つの誇り高き地方」と歌われ、代表チームのために協力し合う関係があるという。W杯で掲げられるのも、共和国の国旗ではなく四地方の紋章をあしらった旗だ。

 フィッシャーさんは「スポーツで北と共和国は協力し合っている。世界に向けてのいい実例」と胸を張り、「この状況はすごく大切。戻るのではなく、前に進み続けること」と力を込める。「前進」が大事なのはラグビーも同じ。ファンが胸を張る代表チームが、世界最高の舞台で平和と協力の歌声を響かせる。

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