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【スポーツ】

暑さ制し、鈴木頂点 世界陸上・50キロ競歩

男子50キロ競歩で優勝し、ガッツポーズする鈴木雄介=ドーハで(榎戸直紀撮影)

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 【ドーハ=共同】陸上の世界選手権第2日は28日、当地で行われ、50キロ競歩の男子は鈴木雄介(富士通)が4時間4分20秒で金メダルを獲得し、東京五輪代表に決まった。日本勢の競歩での優勝は五輪、世界選手権を通じて初めて。世界選手権制覇は2011年大会男子ハンマー投げの室伏広治以来5人目。勝木隼人は27位にとどまり、野田明宏(ともに自衛隊)は途中棄権した。

 女子は渕瀬真寿美(建装工業)が11位だった。競歩は29日未明にかけて行われた。

 男子100メートル準決勝でサニブラウン・ハキーム(米フロリダ大)は10秒15で1組5着、桐生祥秀(日本生命)は10秒16の3組6着、小池祐貴(住友電工)は10秒28の2組7着でそれぞれ敗退した。決勝はクリスチャン・コールマンが今季世界最高の9秒76で初優勝し、前回覇者で37歳のジャスティン・ガトリン(ともに米国)が2位だった。

 男子の走り幅跳び決勝は20歳の橋岡優輝(日大)が7メートル97で日本勢初入賞となる8位に入った。城山正太郎(ゼンリン)は11位。400メートル障害準決勝の安部孝駿(たかとし=ヤマダ電機)は48秒97の3組3着、豊田将樹(法大)は2組8着で敗退した。棒高跳びの山本聖途(トヨタ自動車)、沢野大地(富士通)、江島雅紀(日大)は予選落ちした。

 女子1万メートルは新谷仁美(ナイキTOKYOTC)が11位、山ノ内みなみ(京セラ)は19位。混合1600メートルリレー予選の日本(青山、若林、田村、高島)は3分18秒77の日本新記録を出したが、2組8着で敗退した。

◆冷静にペース配分 五輪「金」見えた

 気温30度超、湿度70%の悪条件で、深夜11時30分から4時間以上も歩き続けた。男子50キロ競歩を制した鈴木の第一声は「疲れた…。疲れ切りました。ゴールするのに必死だったので、金メダルの実感が湧いていない」。勝利をたぐり寄せたのは、鈴木らしい「マイペース」と「暑熱対策」の絶妙なバランスだった。

 事実上、2戦目となる50キロ。蒸し暑さの中で心掛けたのは「歩き切れるペース」だった。タイムを計らず、感覚を重視。脈拍を160程度に抑えることに気を配る。結果として、序盤から先頭を譲らず、15キロまでは1キロを4分50秒台で刻み独走態勢に入った。

 30キロ手前でトイレに行くなど、はたから見れば余裕たっぷり。だが、心の中は「この暑さは予想以上にダメージが蓄積する。脚が重くなって危ないなと思った」。こうなると、後続との間にできた約3分30秒の貯金をいかに使うか。40キロ以降は「戦略的に勇気を持って休む」と給水所で立ち止まって水分補給することも。必死に脚を動かし、39秒差で逃げ切った。

 周到さを見せたのは暑さ対策だ。給水所ごとに手、首、頭用の3種類の冷却グッズを入れた巾着袋を用意。絶えず手のひらを冷やし、首に保冷剤を当て、帽子には氷を入れるなど「うまくいったかな」と手応えをつかんだ。

 真夏の東京で勝つためには戦略が不可欠。「きょうだけゆっくりして、明日から東京に向けて始動していきたい」。もう一つの金メダルへの歩みを進める。 (ドーハ・森合正範)

◆世界一美しい姿勢

レース中の鈴木雄介=榎戸直紀撮影

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 20キロの世界記録保持者であり、50キロの世界選手権金メダリスト。鈴木は競歩界の第一人者と言っていいだろう。

 多くの選手から尊敬されるのは「世界一美しい」と称されるフォーム。地をはうように滑らかに足を運ぶ。膝が曲がらない。腕を振っても肩は振らない。厳格な国際審判員が務める大会でも失格になったことは1度もなく、世界選手権でも警告はゼロだった。

 中学、高校時代の恩師内田隆幸さんは「足首の柔らかさが彼の持ち味。練習では正しいフォームで長い距離を歩き、歩型をつくっていった」と振り返る。「歩型が良ければレース中に駆け引きができる。自信がないと、フォームにばかり頭がいってしまう」と歩型の大切さを説明する。

 いかに反則を取られず、速く歩くか。鈴木は中学1年の競技開始時から意識してきた。「滑らかで、ぶれがないフォームを見たとき、僕はきれいだと感じる」。歩型にこだわり、今なお研究と鍛錬を重ねている。

  (森合正範)

◆過酷レース象徴 「完歩率」は6割 リオ覇者も棄権

 スタート時の気温31度、湿度74%の厳しい条件で行われた50キロ競歩の男子は出場した46人のうち28人しかゴールできず、「完歩率」は60.8%にとどまった。4人が失格し、途中棄権した14人には前回王者のディニ(フランス)、リオデジャネイロ五輪覇者、トート(スロバキア)が含まれている。

 23人が出場した女子は17人がフィニッシュ。6人が途中棄権し、完歩率は73.9%だった。 (共同)

◆20キロにも意欲

 50キロで東京五輪代表に決まった鈴木は世界記録を持つ20キロの代表にも色気を見せた。来年2月の日本選手権20キロ競歩(神戸)に出場する意向で「50キロでも20キロでも金メダルを取りたい。東京五輪はどうしようかな。迷っています」と胸の内を明かした。

 鈴木はスピード勝負の20キロに魅力を感じており、今回のドーハを経験し、猛暑の東京で50キロを歩き切ることに「恐怖心がある」という。「神戸で(20キロの)代表権も得て、ぜいたくな選択をしたいと思う」と話した。 (森合)

 

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