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【スポーツ】

<ラグビーW杯>桜満開 歴史つくった 終盤の猛攻耐え、1位通過

日本−スコットランド 後半、突進する福岡(中央)。この後トライを決める=いずれも日産スタジアムで

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 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で第20日の13日、日本代表は横浜・日産スタジアムで、1次リーグA組最終戦でスコットランドを28−21で退け、悲願の決勝トーナメント進出を果たした。歴史的な3勝を挙げた2015年の前回大会に続き、日本のラグビー史を塗り替える快挙を達成した。

 日本は前半にWTB松島らが3トライを挙げて試合を優位に進めると、後半もWTB福岡がこの日2本目となるトライを挙げて勝ち点のボーナス点1を確保。その後はスコットランドの猛攻をしのいで逃げ切った。開幕戦から無傷の4連勝で勝ち点は19になり、A組の首位で1次リーグを突破。20日に準々決勝でB組2位の南アフリカと当たる。

 試合は台風19号の影響で実施が危ぶまれたが、当日の確認を経て予定通り行うことが決まった。

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 ゴールを背にして猛攻をしのぎ切り、80分終了を告げる鐘の音が鳴った。ついに8強の壁を越えた。前回大会で果たせなかった悲願にたどり着き、抱擁し合う日本の選手たち。リーチ主将は「23人が本当に素晴らしかった。気持ちとフィジカルの強さで勝った」と誇った。

 後半14分、スコットランドに3トライ目を奪われた。最大21点あった日本のリードは1トライ、1ゴール差の7点に縮まった。8強入りを懸けた最後の正念場を迎えた。

 ここで見せたのが選手層の厚さだった。途中出場のプロップ、バルや中島、フッカー坂手が最前線で体を投げ出してタックルに行く。先発メンバーも息を吹き返し、ナンバー8の姫野が密集で相手ボールを奪い返した。ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)は「最後まであきらめない心でやり切った」とたたえた。

 2016年9月のジョセフHC就任時、W杯で8強を目指すにはチームは貧弱だった。前回大会の主力である五郎丸らが代表を退き、リーチも当初は代表活動を辞退。その骨格すらままならなかった。

 「W杯で戦える選手の層を厚くしなければいけない」。指揮官は、大学生を含めて可能性を秘めた選手を代表に呼んだ。就任後、代表戦でプレーした選手は約80人。メンバーを固定せずに競争心をあおり続けた。世界最高峰リーグのスーパーラグビーに参戦し、「ティア1」と呼ばれる世界上位10チームとも全て対戦。世界レベルの戦いを通して選んだ選手を「世界一の練習量」で追い込んだ。鍛え抜かれた精鋭たちはこの日、終盤に息切れすることなく最後までハードワークを続けた。

 新たな歴史を開いた「最強ジャパン」。その先頭に立つリーチが言う。「ここがゴールじゃない」。種をまき、桜の幹は太く育った。次は未知の準々決勝。咲かせた花を、もっと大きく開かせる。 (平井良信)

◆快足福岡 記録に記憶に

 腕を突き上げた後、ピッチに突っ伏して喜びに浸った。今大会初先発となった日本のWTB福岡がチームを勝利に導く2トライを決め、この試合の最優秀選手に選ばれる活躍。快足を飛ばしに飛ばした27歳は「日本ラグビーの歴史をつくるため、全てをささげた。最高の瞬間」とインタビューで声を張り上げた。

 14−7の前半終了間際だった。守備の裏に転がしたCTBラファエレのキックに反応。目覚ましいスピードでボールを収め、インゴールに飛び込んだ。後半早々には相手から奪ったボールが宙を舞ったが、地面に落ちる前に捕球し40メートル以上を独走。「低いボールは得意」と技ありのプレーでボーナス点となるチーム4トライ目を決めた。これで第2戦から3試合連続トライとなり、1度のW杯では日本代表史上初の記録も打ち立てた。

 大会前に右脚を痛め開幕戦を回避。第2戦から途中出場が続き、先発への思いは強かった。「トライより起点になれるプレーができれば」と意気込んだ一戦。この日のWTB松島のチーム初トライにつながる片手パスも繰り出し、サポート役でも貢献した。

 エースが仕事を果たせば、日本は勝てる。それを大一番で示せたのが何よりも大きい。「スピードを生かしてチームに勢いを与えられれば」。次は日本が経験したことのない準々決勝。役目は、さらに重くなる。 (対比地貴浩)

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◆大一番輝く 松島5T目

前半、トライを決める松島

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 WTB松島が日本に流れを取り戻すトライを決めた。0−7の前半17分。左サイドを抜けたWTB福岡からオフロードパスをもらうと、敵陣22メートルライン付近から独走。想定した通りの攻撃で同点のトライを挙げた。福岡と抱き合い、「抜ける場面は結構あると思っていた。チャンスメークが良かった」。

 前回2015年大会でスコットランド相手に苦杯をなめた。「リベンジの気持ちだった」と闘志むき出しで戦った。今大会通算5トライでトップタイに並び「そういう立ち位置にいるので狙っていきたい」と大会最多トライに意欲をにじませた。

◆<広瀬桂司の目> 両WTB 攻守とも上回る

 ワイドに攻めてくるスコットランドに対して、特に福岡、松島の両WTBが攻守ともに上回った。守備面での活躍が目覚ましく、相手は攻め手がなくなっていた。

 私の現役時代と同じSOの田村は日本の司令塔として、ジョセフHCの目指す、スペースへのアタックをけん引していた。前半、日本がボールを保持して攻めた時、相手の守備ラインの後ろにスペースがあると見るや、キックを蹴り出して相手の守りの出足を鈍らせていた。パス、ラン、キックの三つの要素をバランス良く使っていた。

 ただ後半早々、福岡がチーム4トライ目を挙げてから、精神的に緩みが出たように思う。攻撃中の味方のサポートが一歩遅れているので危惧していたが、立て続けに2トライを奪われて追い上げられた。準々決勝の南アフリカ相手には、そういう場面があると勝てない。フィジカル勝負に負けず、80分間戦いきる気持ちで臨んでほしい。

 正直、日本中がこんなにラグビーで盛り上がるなんて思ってもみなかった。「ありがとう」という言葉しか見つからない。すでに新しい歴史をつくってくれた。まだ日本のW杯を見せ続けてほしい。 (元日本代表、トヨタ自動車元監督)

◆稲垣、代表初トライ

前半、トライを決める稲垣

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 プロップ稲垣が代表初トライをマークした。前半25分、フッカー堀江から連続でつながったパスを受け、ゴール下に飛び込んだ。一時、勝ち越しとなる大仕事に「みんながつないでくれて、トライするのはこういう気分なんだと。一番いい舞台で、一番いいトライをさせてもらった」と喜びをかみしめた。

 2014年11月に初キャップを獲得した縁の下の力持ち。「もっといい景色が見られるように、チーム一丸となって頑張っていきたい」と、次の南アフリカ戦を見据えた。

◆スコットランド力負け

 大一番に、スコットランドが真っ向勝負で力負けした。タウンゼンド監督は「彼ら(日本)はとても速く展開し、素晴らしい選手もそろっている」。W杯で1次リーグ敗退が過去に1度しかない伝統チームが、ベスト8を逃した。

 前半6分、SHレイドローとSOラッセルの名コンビの連係で、トライとゴールで幸先良く発進。だが17分に外側を、25分に中央を破られ、連続トライを許して7−14とひっくり返された。後半開始早々には4トライ目を決められ、ボーナス点を奪われた。最後まで目の離せない展開に持ち込んだが、指揮官は「7点差にしてから20分以上あったが、精度が足りなかった」。

 前回W杯で45−10と快勝した日本戦に先発した7人を、今回も先発に並べた。その試合で20得点したレイドローは後半早々に交代。名手は「日本は進化しているが、簡単にトライを許してしまった自分たちも悪い」と、せめてものプライドをのぞかせた。

◆日本、過去最高7位に

 W杯日本大会の1次リーグA組で13日にスコットランドを28−21で破った日本が世界ランキング8位から過去最高の7位に浮上した。国際統括団体、ワールドラグビーが発表する世界ランクは、W杯期間中は試合ごとに更新される。

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<勝ち点> (1)勝者は4点(2)引き分けは両者に2点ずつ(3)敗者は0点(4)勝敗にかかわらず4トライ以上を取ったチームに1点(5)7点差以内で負けたチームに1点

 

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