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【スポーツ】

<宴の余韻 ラグビーW杯>(3) 本気の熱狂、敵味方なく

日本−アイルランド戦の試合前、記念撮影のスマホに写り込んで「いよ〜っ」と決めポーズ。ファンも大会を楽しんだ=9月28日、静岡スタジアムで

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 キックオフ1時間前、カメラマンのピッチエリアへの入場が始まるころのスタジアムの雰囲気が好きだ。選手の登場を待ちわびる子どもたち、フェースペイントにいそしむ若者、ビール片手に歌うオールドファン。オレンジ色の夕焼けからゆっくりと空の色が濃紺へと変わっていく。緊張と興奮に包まれたスタジアムは、まるでショーが始まる前の幕が下ろされたステージのようだ。

 44日間におよぶワールドカップを終えた。ゴール裏のカメラマン席から見えた景色は、試合ごとに特徴があり特別だった。開幕戦の味の素スタジアム、大勢の日本ファンで埋め尽くされたスタンドの雰囲気は正直、サッカー日本代表戦と変わらなかった。本音を言えばワールドカップではあったが、どこか「ワールドカップ」ではなかった。「何か」足りない。そんな気がした。

 その「何か」を感じられたのは日本代表の第2戦、静岡スタジアムでのアイルランド戦だった。熱狂的なアイルランドファンが歌うアンセム「アイルランズ・コール」が響いた瞬間、スタジアムは「ワールドカップ」に変化した。肩を組み、歌い、選手たちのプレーに歓声を上げる。敵も味方もなく目の前の試合をひたすら楽しむ観客の姿は世界一だった。劇的な勝利に酔い、万歳三唱で喜ぶスタンドは最も心に残る景色の一つになった。

 応援するチームの勝利を願うのは当然だが、それ以上に最高のラグビーを見たい。そう思うのがラグビーファンだ。その後の試合、日本の観客の表情は明らかに変わった。「ラグビーを楽しもう」。すべての顔からその思いが伝わってきた。

 本気で楽しむことは、簡単なようで難しい。スタジアムの雰囲気、プレーの質、何よりもファンが必要だ。

 今後に向けて、注目しているのは日本ラグビー協会の清宮克幸副会長が掲げるプロリーグ発足の件。スポンサーや観客数、スタジアムや年俸、放映権料など課題はあるが、「プロラグビー選手」という職業が子どもたちに夢を与えるようになれば自然と親のラグビー熱も高くなるはず。

 やるべきこととやれることはあるはずだ。上質なラグビーを味わった。この味を私たちは決して忘れてはいけない。 (岩本旭人)

 

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