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【スポーツ】

イングランドのメダル拒否 「良き敗者」正論だけど… 表彰は偽善ではないのか

表彰式で準優勝のメダルをかけてもらわず手で受け取るイングランドのコール(左)=2日、日産スタジアムで

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 「まだ整理がつかない…」。2009年11月3日。国立競技場で行われたJリーグのヤマザキナビスコ・カップ(現YBCルヴァン・カップ)決勝で敗れた川崎の中村憲剛からは絶望感しか伝わってこなかった。過去も2度、準優勝。悲しみに打ちひしがれた川崎の選手たちは表彰式でメダルをすぐに外したり、ガムをかむなど非礼な行為をしたことで激しい非難を浴びた。

 当時の鬼武健二チェアマンも「許せない態度。負けたのは己の責任。全ての人に失礼」と怒りをあらわにした。川崎は賞金5000万円の返上を申し出る事態に発展。Jリーグ側は賞金の返納に応じない代わりに、サッカーの普及活動などに使うよう促した。

メダルを首から外し手に持って表彰台を下りる川崎の選手ら=2009年11月3日、国立競技場で

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 今月2日、ラグビーのワールドカップ日本大会決勝後の表彰式で、敗れたイングランドの選手らがメダルを首にかけられることを拒否したり、授与された直後に首から外すなどして世界中から痛烈な批判にさらされている。ラグビーは紳士のスポーツ。ましてやラグビー発祥の地の選手たちが取った態度に、バッシングが強まるのは理解できる。

 「グッド・ルーザー」。スポーツ界には「良き敗者」という言葉がある。アスリートには敗北を認める度量が求められる。激戦を終え、勝者をたたえる敗者の姿は美しい。

準優勝のメダルを首から外しセレモニーを見つめるイングランドのファレル主将(左)とイトジェ=2日、日産スタジアムで

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 ただ、現場で選手の熱に触れてきた記者として、正論だけでは片付けられない。夏の甲子園大会、試合後の控室で立つこともままならず、泣きじゃくる高校球児を何度見てきたことか。プロ野球選手が悔しさのあまり物に当たり散らす姿も知っている。敗者は時にもろくも、醜くもなる。

 準優勝者もまた、敗者という真実。それでも「ファイナリスト」として大観衆の前でねぎらおうとするのは、大会主催者の偽善にも映る。頂点を目前で逃して間もなく、衆人環視の中で受け取る銀メダルには屈辱が宿る。敗者へのリスペクトとは―。あの日から10年。繰り返された愚行を憂う一方で、表彰式の在り方にも懸念を抱かざるを得ない。 (磯谷佳宏)

(11月9日東京新聞朝刊スポーツ面に掲載)

 

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