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【スポーツ】

<もう一度舞台へ 金メダリストの闘い>(中)レスリング・土性沙羅 けがの残像、今なお

昨年12月の全日本選手権で森川美和(右)と対戦する土性沙羅=駒沢体育館で

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 相手は過去3戦、すべて10点差のテクニカルフォール勝ちで退けてきた後輩だった。2019年12月のレスリング全日本選手権準決勝。優勝すれば東京五輪代表に決まる土性沙羅(東新住建)が駒を進めると誰もが思っていた。だが、2−9の完敗。周囲はざわついたが、本人にとっては想定内だったのかもしれない。

 土性のお株を奪う素早いタックルで得点を重ねた20歳の森川美和(日体大)は、「挑戦者なので思い切り行こうと思った」。恐れるもののない新鋭の勢いを前に、なすすべがなかった。土性が国内大会で優勝を逃すのは、高校生でシニアに挑んだ12年以来初めてだった。

 大会の1カ月前に左膝を負傷。満足に練習できず、痛み止めを飲んでの強行出場だった。ただ、影響については「あったとは思うけど、気持ちの面でもいろいろと」。むしろ精神面の問題を自覚する。

 念頭にあるのは、手術した左肩の影響だ。18年3月のワールドカップで、リオデジャネイロ五輪前からの脱臼癖が再発した。メスを入れ、半年間のリハビリ生活を送った。完治はしたが、復帰後のレスリングは全盛期に程遠い。

 「肩を手術し、怖くてタックルに入れなくなった選手を何人も見てきた」とは、ロンドン五輪金メダルの小原日登美さんの言葉。重量級ながら低く素早いタックルを最大の武器に、世界の頂点に駆け上がった土性。「頭ではやろうと思っているんですけど、体が動いてくれなくて」。入り損ねて肩を痛める不安から、実戦で思い切ったタックルにいけない自分が、もどかしい。

 メダルラッシュに沸いたリオの女子レスリング。歓喜した仲間のうち、五輪連覇の権利を手にしているのは同級生の川井梨紗子(ジャパンビバレッジ)だけ。敬愛する一つ年上の登坂絵莉(東新住建)は、全日本選手権の敗戦で東京五輪への道が消滅した。

 登坂も五輪後、けがに苦しんできた。後輩の苦しみは痛いほどにわかる。だからこそ「チャンスがある限り、食らい付いてほしい」と背中を押す。

 3月8日、代表決定プレーオフに臨む。相手は再び、森川。「もう、後がない」と土性。負ければ五輪連覇はついえる。覚悟を決め、タックルに入れるかどうかが勝敗を左右する。 (多園尚樹)

<どしょう・さら> 2016年リオデジャネイロ五輪69キロ級の金メダリスト。17年の世界選手権で2年連続の世界一に輝いた。東京五輪は68キロ級で出場を目指す。五輪3連覇、世界選手権13連覇の吉田沙保里さんの実家、一志ジュニアで8歳の時に競技を始めた。三重県松阪市出身。25歳。

母校のレスリング部恒例の新春餅つき大会で英気を養った=愛知県大府市の至学館大で

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