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【スポーツ】

<東京マラソン 日本記録の先へ>(上) 設楽悠太(28)/車いすの部・鈴木朋樹(25)

 東京マラソン(東京新聞など共催)が3月1日に行われる。男子は東京五輪のラスト1枠が懸かるレース。大迫傑(ナイキ)の持つ日本記録2時間5分50秒を超えなければ、昨年9月の東京五輪代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)3位の大迫から出場権を奪えない。だが、目指すのは日本記録ではない。その先を見据える2人を紹介する。

◆興奮させる走りを 設楽悠太(28)

昨年9月のMGCでスタート直後に抜け出した設楽悠太(手前)=東京都港区で

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 東京五輪への思いを問われると、設楽はきっぱり言った。

 「正直どうでもいいと思っています」

 五輪とはどういう舞台かと聞かれれば、淡々と答える。

 「リオデジャネイロ五輪(1万メートル)を走っても、ただ名誉しかついてこなかった。今は名誉のために走る必要はない。夏に強い選手はいくらでもいる。僕は冬に勝負したい」

 価値観は人それぞれ。選手は必ずしも五輪を目指すわけではない。設楽の五輪を重んじない姿勢は一貫している。

 では、どんなレースをしたいのか。なぜ走るのか。設楽には強いこだわりがある。

 「(日本記録の)2年前と同じく、見ている人を興奮させるような走りをして、日本のマラソンのレベルを上げたい。前半から勝負していかないと世界に勝てないし、見ている人もつまらない」

 理想のマラソン像はスピード勝負で42・195キロを押し切る。序盤からハイペースで刻み、観客を期待感でわくわくさせ、最後まで世界と勝負することだ。

 昨年9月のMGCでは誰もが様子見する状況で、号砲と同時に飛び出した。設楽のハイペースに誰も付いてこない。中間点では2分以上差を広げ、見ている者の度肝を抜いた。後半から日差しが強くなり、徐々に失速。37キロ付近で集団にのみ込まれたが、「やることをやった」と悔いはない。むしろ、日本マラソン界への失望感が襲ってきた。

 「海外のトップがMGCを見たら、笑われて終わり。2位以内を目指す争いをしてもつまらない。日本のレベルはまだまだ低いなと思った」

 代表選考会であっても、世界との戦いを想定していた。

 今年に入り、全日本実業団対抗駅伝、全国都道府県対抗駅伝、丸亀国際ハーフとレースを重ね、熊日30キロロードレースで優勝。調子を上げて東京に挑む。

 「東京で2時間5分台の日本記録を出しても(五輪代表を)辞退すると思う。4分台で走れないと東京五輪で走る資格はないと思っている」

 五輪に参加するだけなら意味はない。2時間4分台の力がなければ、日本中を興奮させ、世界と勝負することはできない。それが設楽の本音。だから、代表の座を得ることではなく、その先を思い描いて序盤から飛ばす。 (森合正範)

<したら・ゆうた> 2016年リオデジャネイロ五輪男子1万メートルに出場し、29位。18年東京マラソンで2時間6分11秒をマークし、16年ぶりに日本記録を更新した。19年のゴールドコーストでマラソン初優勝。埼玉・武蔵越生高、東洋大出。ホンダ。28歳。埼玉県寄居町出身。

◆パラへ負けられぬ一戦 車いすの部・鈴木朋樹(25)

大分国際車いすマラソンでゴールする鈴木朋樹=大分市営陸上競技場で

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 東京マラソン車いすの部に招待選手で出場する鈴木朋樹(25)=トヨタ自動車=は、トラックの中距離種目も主戦場とする「オールラウンダー」だ。代表に内定した東京パラリンピックに向けて弾みをつけるためにも、コースが似た今レースで優勝を狙う。

 マラソンは中距離種目の練習の一環として、スタミナをつけるために始めた。当初は本命ではなかったが、昨年4月のロンドンマラソンで3位に入り、陸上でいち早く代表に内定した。

 近年の車いすマラソンは、ラストスパートが勝負どころになることが多い。練習では「短距離選手のような感じ。400メートルまでしか走らない」とスプリントを磨く。スタートダッシュやゴール前の再加速など、どの種目でも大事なメニューを重視する。

 生後8カ月で交通事故に遭い、脊髄を損傷。足先まで感覚はあるが、膝から下に力を入れるのは難しい。

 物心ついたときには、千葉県館山市の自宅から横浜市の車いす陸上クラブに通っていた。小学5年の時、クラブに教えに来た元日本代表の花岡伸和さんから一対一で指導を受け、競技にのめり込んだ。

 高校時代は通学に片道1時間半かかり練習時間が減ったが「世界で活躍するアスリートになりたい」という思いは強かった。大学進学後、千葉市で一人暮らししながら2016年リオデジャネイロ・パラリンピックを目指す。コーチがおらず自己流。出場は逃したが、教訓を得た。現在は専門家から助言を受けてメニューを組み立てる。

 昨年11月、アラブ首長国連邦(UAE)の世界選手権で400メートル、800メートル、1500メートルの3種目に出場後、すぐに帰国して大分国際車いすマラソンを走り、自己記録を更新。東京パラリンピックでも想定される強行日程をこなした。東京マラソンも、今夏に向けた絶好の予行だ。 (神谷円香)

<すずき・ともき> 東京マラソンは2017年3位、18年2位、19年6位。19年大分国際車いすマラソンは1時間22分55秒の自己新で2位。19年世界選手権800メートル、1500メートルで8位。千葉・木更津総合高、城西国際大出。千葉県館山市出身。

東京パラリンピックの前哨戦と位置付けて優勝を目指す鈴木=昨年11月、大分市で

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