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【栃木】

<奥島孝康のさらに向こうへ>ゴーン事件に思う(上) 「企業統治」は会社の憲法

 小山市の周辺には自動車産業が多い。だからというわけではないが、日産のカルロス・ゴーン氏をめぐる事件がいま騒がれているので、「コーポレートガバナンス(企業統治)」について考えてみよう。

 ぼくが会社法を専攻したのは、高校生の時分から、世にある巨悪と闘うためになにをなすべきかを一貫して考え続けてきた結果であって、この齢(よわい)になっても、その考え方は変わらない。

 紆余曲折(うよきょくせつ)はあったが、それが資本主義の世を動かす法的巨人たる「会社」の法律学的な解明であった。そしてたどり着いたのが、コーポレートガバナンスというテーマである。

 一九九四年、ぼくが早稲田大総長になった年、ぼくは「日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム」という企業人と学者の共同学会の初代共同理事長となり、続いて総長退任後に「大学監査協会」の初代会長となって、「ガバナンス」の問題をかなり広く考えるようになった。

 ところで、「会社のガバナンス」とは、いわば会社の憲法のようなものである。憲法では「統治機構」と「基本的人権」を定めているが、コーポレートガバナンスでは、「統治機構」と「株主の権利」および「ステークホルダー(利害関係者)の権利」のことを意味する。

 端的にいえば、この根幹をしっかり法定しておけば、会社はもとより、各種の組織も正常に運営できるはずである。が、こうした細則主義だけでは実際にはなかなか巧(うま)くいかない。

 そこで、最近では、法律ではなく一般に「ガバナンス・コード」と呼ばれる「原則(コード)」に対して「コンプライ(実施)・オア・エクスプレイン(説明)」という対応が導入された。

 ごく簡単にいえば、「コード」というのはコンプライアンスとして従うべき原則であり、これに従わなければ直ちに違法とするのではないが、コードの趣旨を実施しないのであれば、その実施しない理由(原則を実施しない理由)を株主等のステークホルダーの理解を十分得られるよう説明すべきであるとするものである。

 もっとも、ガバナンス・コードの対象は、「社会の公器」とされる上場会社が中心であり、そこでは「攻めのガバナンス」が強調されている。

 もとより、企業の不祥事の防止など「守りのガバナンス」は依然として重要ではあるが、株主との適切な協働を確保し、持続的な成長に向けた取り組みに邁進(まいしん)することが求められる。

 このため、取締役会・経営陣は、ステークホルダーの権利・立場の健全な事業活動倫理を尊重する企業文化・風土の醸成に向けたリーダーシップを発揮し、企業の持続的成長と中長期的な企業価値の創出に努めなければならないとされている。

 つまり、アメリカ流のガバナンス論議の中心には一種の株主万能主義的な傾向がみられるのに対して、日本版ガバナンス・コードでは、企業の中長期的な成長促進が重視されているのが大きな特徴である点は注目されてよい。

 また、大学監査協会はどうか。ぼくはここでも会長職を十年近く務めた。監査協会というと従来会計監査が主要任務と見なされてきたが、ぼくはここでは会計監査はもとより教学監査に至るまでその監査対象を拡(ひろ)げ、その内容の研究を始めた。

 もっとも、教員の論文の内容の監査などを考えているわけはないが、少なくとも教師としてのあり方には、いろいろと問題がありそうである。

     ◇

 (下)は後日掲載します。

<おくしま・たかやす> 愛媛県日吉村(現鬼北町)生まれ。早稲田大第一法学部卒。同大第14代総長。同大ラグビー部長、探検部長、日本私立大学連盟会長、日本高校野球連盟(高野連)会長などを歴任。ボーイスカウト日本連盟理事長、2013年から白鴎大学長。79歳。

 

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