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【栃木】

シルビアシジミ、2人の物語 発見のフェントン 命名の中原和郎

「シルビア物語」を手にする中村さん=宇都宮市で

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 さくら市の鬼怒川河川敷で確認された絶滅危惧種のチョウ「シルビアシジミ」にまつわる秘話を宇都宮大学名誉教授の中村和夫さん(82)が「シルビア物語」(随想舎)としてまとめた。チョウは英国から招かれた教師が新種として発見。名は鳥取県出身の昆虫学者の早世した長女に由来する。中村さんは「図鑑でもほとんど触れられていない発見と命名の経緯を知ってほしい」と強調している。 (原田拓哉)

 シルビアシジミは、羽を広げると二センチほどの小さなチョウ。国内各地に生息しているが、河川改修や外来種の進出などで、食草としているミヤコグサが減少し、生息域が激減している。

 さくら市では生態系維持のシンボルとして天然記念物に指定し、市民グループが保護活動にも取り組んでいる。

 東京大学で英語教師をしていたモンタギュ・アーサー・フェントン(一八五〇〜一九三七年)は、昆虫の知識も豊富で学生らと奥州街道を北上。一八七七年、それまでヤマトシジミと考えられていた鬼怒川河川敷の草むらを飛ぶチョウが、別の種であることを確認した。フェントンは、学生らと周辺の生息域を丹念に調査し、ミヤコグサを食草としていたことも突き止めた。

 「シルビア物語」では、北海道などへのチョウ採取旅行などについても紹介している。

 一方、フェントンが、このチョウを見つけてから約四十年後、一人の昆虫学者が、命名に貢献することになる。

 少年時代から昆虫熱が強かった昆虫学者の中原和郎(わろう)(一八九六〜一九七六年)は米国イサカ市のコーネル大学の大学院に留学。米国女性ベレニス・ドロシーと結婚し、二〇年に長女シルビアが誕生するが生後約八カ月で亡くなった。

 その二年後の二二年、中原は、日本の知人から取り寄せたチョウの和名として、亡くなった娘の名を付けた。

 中原は昆虫学者として知られるが、がん研究の権威でもあり、国立がんセンター(現国立がん研究センター)の名誉総長も務めた。

 中原を調査していた中村さんは二〇一六年、イサカ市の墓地にシルビアが埋葬されていることを突き止め、現地を訪ね墓も見つけた。

 中村さんは「一つのチョウが見つかり、名前が付き、それを守ろうという運動がある。いろいろな物語があって奥深い」と話す。

 「シルビア物語」は四六判(税別千二百円)。県内主要書店で取り扱っている。

フェントンが採取したシルビアシジミ(大英自然史博物館蔵)=「シルビア物語」から

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