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【栃木】

台風19号乗り越え「おいしいイチゴ届ける」 「いちご市」宣言、鹿沼市

冠水した泥で白っぽくなったイチゴの苗を確認する中田さん=鹿沼市で

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 台風19号の影響で県内では、半世紀にわたり全国1位の収穫量を誇るイチゴ栽培に大きな被害が出ている。県の緊急調査で、被害面積は57ヘクタール、約20億円に上ることが判明した。県内産は1968年産から51年連続で日本一を続けている。中でも県西部の鹿沼市は「いちご市」を宣言する有数の産地だ。被災農家は冠水被害を乗り越え、収穫に向けて作業を続けている。(小川直人)

 「自然の猛威は怖い」。同市楡木町の農家中田真一さん(71)は、泥で汚れた県内の主力品種「とちおとめ」の苗を前に肩を落とした。十二日夜、ビニールハウスの近くを流れる小藪(こやぶ)川や農業用水路の水があふれ、ハウス六棟約千五百平方メートルが全て冠水した。

 中田さんがハウスを確認した十三日朝は、苗はまだ水に漬かっていた。風の被害は少なく、ハウス自体は無事だった。十二月上旬の収穫を見据え、九月中旬に苗を植えていた。暖房機を設置するなど冬支度の直前だった。「ハウスも壊れていたら、イチゴ作りとはサヨナラだった。この年で復旧は無理だ」

 ハウスの水は十五日には引き、散水して苗の泥を流す作業を始めた。作業が終われば消毒する。生育が遅れ、病害虫に見舞われるかもしれないためだ。全滅は逃れたが、どれだけ収穫できるかは未知数だ。

 イチゴ作りは四十年のベテラン。雪害に悩まされることはあったが、台風の被害は四年前の関東・東北豪雨時以来という。冠水の規模は今回の方が大きい。

 「秋がなくて、夏から一気に冬が来る。気候がおかしくなってきている」と感じている。「農家は草花や雑草の様子を見て、季節や気候を感じ取る。農家の勘だけでは栽培がうまくいかなくなってきた」とも。

 それでも、泥を洗い流す手を休めない。「市内には全部やられた農家もある。だからこそ、消費者においしいイチゴを届けないと。産地の農家の責務だから」と前を向いた。

◆農業被害額39億8500万円 イチゴが50%、19億8200万円

 県は台風19号による県内の農業被害額(農作物、家畜、施設等)の概況をまとめた。十六日時点で被害金額は三十九億八千五百万円に上っている。

 農作物では、十九億八千二百万円のイチゴが被害額全体の約50%を占めた。県内十七市町で被害が出ている。

 次いでトマト(約四億八千八百万円)、ニラ(約一億三千六百万円)の順。

 家畜では、肉用牛や採卵用鶏の流出などで約千二百万円。施設等では、パイプハウスの損壊などで約八億四千九百万円。

 市町別被害額では、足利市が約十一億二千六百万円と最大。次いで佐野市(約九億一千八百万円)、栃木市(約七億三千万円)と、県南地域の被害の大きさが浮き彫りになった。

 農地や水利施設などは調査中で、被害額は増える見通し。(北浜修)

<県内のイチゴ生産> 水稲栽培の裏作で高収入が得られるとして1952年から宇都宮市や足利市で栽培されたのが産地の始まりとされる。2018年産の県内収穫量は2万4900トン。県開発の「とちおとめ」が主力で、高級品種として「スカイベリー」も開発。クリスマスケーキの需要もあり、年末から春先にかけてが出荷のピークという。

 

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